【コラム】稲田防衛大臣の安保法制「運用の責務」
2016年9月3日 16:11
稲田朋美防衛大臣は今日3日で就任1か月を迎えた。記者会見で「緊張感を持って職務にあたっている」とし「国内外の部隊視察、外国要人との会談を含め、様々な業務を行ってきたが、厳しさを増しているわが国の状況の中、わが国自身の防衛力強化、日米同盟の強化、関係諸国との良い関係を構築していくなど、わが国の防衛に万全を期していきたい」と強調した。
就任から各地の自衛隊基地を精力的に視察している。8月15日にはジブチを訪ね、海賊対処のPKO活動にあたる自衛隊員らを激励し、現地状況を自らの目で確認した。防衛大臣としての重要な判断材料になると期待する。
特に、安保法制に基づく『駆けつけ警護』や『住民保護』『宿営地の共同防護』など『任務遂行のための武器使用を可能にした』新たな任務を、南スーダンでPKO活動にあたる自衛隊員らに課すことの要否は、自ら直接に現地を見ることから、判断材料の収集・分析にあたって頂きたい。
その必要を強く感じて、8月20日のコラムに「9月国会までに南スーダンを訪問してほしい」と書いた。それだけに、8月末にマスコミ各社が「防衛大臣、9月中旬に南スーダン訪問へ 調整に入った」と報じているのを見て、明るいニュースに感じた。訪問は必要だからだ。
安保法制は法案審議過程から「違憲の疑い」があり、自公の圧倒的多数の中、成立した経緯がある。当然、違憲の疑いが消えたわけではない。今も世論は分かれており「自衛隊員が殺し、殺される危険」を危惧する声は収まっていない。
国会で法案が成立した以上、これに基づくPKO活動での『駆けつけ警護』などの新任務は必要なら付与されることになる。
その初のケースが11月以降に派遣予定の南スーダンPKO活動の新部隊になる可能性がある。
付与が妥当なのか。日米同盟強化のための米国追従判断でなく、日本独自の厳格な基準により、国家安全保障会議での判断が求められる。
また付与することが必要と判断した場合、国会論戦の中で、自ら現地を視察した結果を踏まえ、多くの国民が理解、納得できる説明を自身の言葉で明確に行って頂くことが必要だ。
あわせて10月から11月に我が国周辺海空域や基地、米国グアム島、北マリアナ諸島テニアン島や周辺海空域、基地で予定される「我が国防衛のための米軍との共同対処要領に係る訓練」(キーン・ソード)があるが、過去12回の訓練内容と大きく変わる可能性が高い。
『存立危機事態』訓練や地球規模で米軍などの兵站支援を行う『重要影響事態』訓練についても、稲田防衛大臣は共同訓練の透明性を高めるとともに、安保法制への政府としての説明責任を、こうした訓練の透明性確保や国会答弁を通して、きっちり果たしていかれることを期待したい。稲田防衛大臣の安保法制「運用の責務」は非常に重い。(編集担当:森高龍二)