ビーコンとドローンを活用した徘徊見守りサービス開始
2016年8月30日 07:37
認知症高齢者の徘徊が社会問題となっている。厚生労働省によれば認知症の高齢者は2012年に約460万人だったのが、25年には65歳以上の5人に1人、約700万人に達するとしている。2015年には認知症が原因で行方不明者が、全国で1万2208人にのぼり(前年より1425人増加)、3年連続過去最多を更新している。徘徊による事故や認知症高齢者による万引きなどのトラブルも多発しており、国や自治体がそれぞれ徘徊の早期発見のための取り組みに力を入れている。
茨城県守谷市では8月26日、「徘徊高齢者SOSネットワーク」事業に乗り出し、見守りシールを使って徘徊高齢者を早期発見する取り組みを開始。シールのQRコードをスマホなどで読み取ることで身元が判明して発見が早まる仕組み。新潟県新発田市では靴に貼る反射ステッカーを使った取り組みが行われている。対象者に登録番号付きのステッカーを身に付けてもらい、発見時には身元の確認が迅速に行なうことが可能となっている。
小型発信機やビーコンを活用した見守りサービスも開始されており、ユニークなものではドローンも活用して徘徊高齢者の早期発見を目指している。OFF Lineは高齢者の在宅や帰宅を検知したり、徘徊時に位置情報を把握したりできる「みまもりビーコン」サービスの提供を8月より開始。インターネットを使わず、最大直径240mで情報通信できるシステムとスマートフォン向けアプリ「AirTalk」、居住場所に設置したビーコンを活用し、認知症患者の現在位置を家族やケアマネージャーにリアルタイム配信する。高齢者の探索には、身に付けた「御守り」から発信されるビーコン電波をドローンが探索する。同システムは4月14~15日に金沢市内で行われた大規模実証実験にて既に成果が実証済みとのこと。
全国の特別養護老人ホームへ(特養)の入所申込者は約52万人にのぼり、東京都高齢者福祉施設協議会が都内の特養に対して行なったアンケート調査では1施設当たりの平均待機者数は296.3人となっている。15年4月からの介護法改正に伴い、特養の入所基準がより重度の介護度(要介護度3以上)に引き上げられたこともあり、入所基準に満たなかったり、経済的に余裕のない高齢者は自宅での介護を余儀なくされている。認知症高齢者の増加とともに徘徊のリスクが高くなることは必至で、介護者の労力が軽減できて有効性のある徘徊高齢者見守りシステムの定着が望まれる。(編集担当:久保田雄城)