インフォマートは売られ過ぎ感強く反発のタイミング、16年12月期増収増益・増配予想
2016年8月22日 08:39
インフォマート<2492>(東1)は企業間電子商取引「BtoBプラットフォーム」各種システムを提供している。16年12月期第2四半期累計はソフトウェア償却費増加などで減益だったが、利用企業数が増加基調であり、ストック型収益のシステム使用料が伸長して通期増収増益・増配予想である。株価は第2四半期累計業績を嫌気する形で年初来安値圏だが、売られ過ぎ感が強い。ストック型収益モデルを見直して反発のタイミングだろう。
■BtoB(企業間)電子商取引プラットフォームを運営
企業間で行われている世界共通の商行為を電子化する企業間電子商取引プラットフォーム「BtoBプラットフォーム」を運営している。子会社はインフォライズがクラウドサービス事業、インフォマートインターナショナル(香港)が海外「BtoBプラットフォーム」事業を展開している。
16年1月サービスブランドを「BtoBプラットフォーム」に変更し、新サービスは、企業間受発注業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注、食の安全・安心の商品仕様書DBであるBtoBプラットフォーム規格書、企業間請求書発行・受取業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム請求書、BtoB専用の販売・購買システムであるBtoBプラットフォーム商談とした。
これに伴って16年12月期から事業セグメント区分を変更し、受発注事業(BtoBプラットフォーム受発注)、規格書事業(BtoBプラットフォーム規格書)、ES事業(BtoBプラットフォーム請求書とBtoBプラットフォーム商談)、その他(海外・メディア事業など)とした。
■利用企業数、流通額は増加基調
フード業界向けで外食チェーンと食材卸の間の受発注をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注を主力として、全業界を対象とするBtoBプラットフォーム請求書の利用企業数も増加基調である。
15年12月期末のBtoBプラットフォーム利用企業数(主にフード業界向けFOODS Info Martで集計)は3万9028社、利用事業所数は22万7243事業所、年間取引高は1兆1768億円だった。事業所数はフード業界全体118万6312事業所に対して19.1%、年間取引高は外食産業全体の仕入金額(市場規模の30%と推定)の16.4%を占め、フード業界NO.1のBtoBプラットフォームである。
なお商品ブランド変更および事業セグメント変更に伴って、16年12月期から利用企業数などの表記も変更した。変更後の表記では15年12月期末のBtoBプラットフォーム利用企業数(無料利用を含む全業界のID数で集計、海外は除く)は6万2039社、事業所数(本社・支店・営業所・店舗)は28万167事業所、流通金額(全業界の受発注金額と請求書金額の合計)は1兆3678億円だった。
そして16年12月期第2四半期末(16年6月末)時点では、BtoBプラットフォーム利用企業数が7万9507社、事業所数が35万1019事業所、流通金額が1兆3678億円となった。国内最大級のBtoBプラットフォームである。
なお15年サービス稼働したBtoBプラットフォーム請求書の利用企業数は、16年2月5万社、16年5月6万社、16年6月7万社、16年7月8万社を突破し、拡大ペースが加速している。16年6月には「請求書完全電子化支援パック」の提供を開始し、他システムとの連携も推進して、16年9月利用企業数10万社、電子請求の年間流通金額1兆円を目指している。
■業界標準化に向けたシステム連携を強化
業界標準化に向けたシステム連携を強化し、15年1月全国の商工会議所・商工会等が運営する「ザ・ビジネスモール(B-MALL)」の事務局を務める大阪商工会議所と業務提携、15年4月内田洋行<8057>やミロク情報サービス<9928>など19社24ソリューションが提供する販売管理・会計・店舗管理システムとのデータ連携を強化した。16年6月末現在BtoBプラットフォーム受発注は77社が提供する販売管理・会計・店舗管理など95ソリューションと連携している。
企業の受発注業務、請求業務、会計処理などにおける生産性向上を追求し、BtoB標準プラットフォームを実現するため、他社とのシステム連携戦略を強化し、今後3年間で利用企業数100万社への普及を目指すとしている。
16年6月にはPR TIMES<3922>が運営するプレスリリース配信サービス「PR TIMES」と連携開始した。BtoBプラットフォームは新たなインターネットメディアとして企業間情報伝達の効率化を促進する。16年7月には、BtoBプラットフォーム受発注の英語版をシンガポールの日本の外食15店舗へ提供開始した。世界の英語圏各国にBtoBプラットフォーム受発注を提供できるシステムが整い、利用促進を行う。
■月額課金のストック型収益モデル
システムをネット経由で提供するクラウド型サービスである。ネット環境さえあれば月々低料金で最新サービスを利用できるため利用企業数は増加基調である。そして利用企業数増加に伴って月額課金のシステム使用料収入が増加するストック型収益モデルである。
四半期別業績推移を見ると、14年12月期は売上高が第1四半期11億57百万円、第2四半期12億06百万円、第3四半期12億66百万円、第4四半期13億48百万円、営業利益が4億23百万円、4億17百万円、5億46百万円、5億57百万円、15年12月期は売上高が13億10百万円、14億04百万円、14億32百万円、14億86百万円、営業利益が5億11百万円、4億77百万円、5億44百万円、5億62百万円だった。
売上総利益率は13年12月期65.7%、14年12月期77.0%、15年12月期72.9%である。14年12月期は既存プラットフォームの期間短縮による償却が13年12月期に完了したことも寄与した。また販管費比率は13年12月期40.4%、14年12月期38.0%、15年12月期35.7%である。販管費比率は増収効果で低下傾向である。15年12月期のROEは19.5%で14年12月期比12.8ポイント低下、自己資本比率は85.2%で同14.4ポイント上昇した。配当性向は56.3%だった。配当政策については個別業績に応じた配当性向50%を基本方針としている。
■16年12月期第2四半期累計はソフトウェア償却費増加などで減益
今期(16年12月期)第2四半期累計(1~6月)の連結業績は売上高が前年同期比9.8%増の29億81百万円、営業利益が同1.9%減の9億69百万円、経常利益が同5.9%減の9億32百万円、純利益が同2.1%減の6億円だった。
請求書のシステム開発先行投資に伴うソフトウェア償却費の増加や人件費の増加などで減益だが、利用企業数の増加基調に変化はなく、ストック型収益のシステム使用料が順調に伸長して増収だった。売上総利益は同6.3%増加したが、売上総利益率は70.6%で同2.3ポイント低下した。販管費は同14.5%増加し、販管費比率は38.1%で同1.6ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化(前期は差益4百万円、今期は差損35百万円)した。
セグメント別(連結調整前)に見ると、受発注事業は売上高が同13.1%増の17億99百万円で営業利益が同17.6%増の9億25百万円、規格書事業は売上高が同23.1%増の5億60百万円で営業利益が同11.4%増の1億65百万円だった。外食チェーン、ホテルチェーン、商業施設、給食会社など買い手新規稼働が増加してシステム使用料が順調に伸長した。
ES事業は売上高が同5.8%減の5億87百万円で営業利益が1億06百万円の赤字(前年同期は68百万円の黒字)だった。請求書が大幅増加したが、商談が減少した。その他は売上高が同16.7%減の53百万円で営業利益が14百万円の黒字(前年同期は11百万円の赤字)だった。
第2四半期末時点のBtoBプラットフォーム利用企業数は15年12月期末比1万7468社増加の7万9507社、事業所数は同7万852事業所増加の35万1019事業所となった。流通金額は1兆3678億円となった。
受発注は買い手企業が同208社増加の1914社、売り手企業が同784社増加の2万9024社、規格書は買い手機能企業が同38社増加の407社、卸機能企業が同40社増加の514社、メーカー機能企業が同111社増加の6165社となった。請求書は企業数が同3万3475社増加の7万4198社(受取側契約企業が同381社増加の1038社、発行側契約企業が同143社増加の370社、契約企業合計が同524社増加の1408社)となった。商談は買い手企業が同36社減少の6879社、売り手企業が同131社減少の1821社となった。
■16年12月期通期は増収増益・増配予想
今期(16年12月期)通期の連結業績予想は前回予想(2月15日公表)を据え置いて売上高が前期(15年12月期)比18.1%増の66億49百万円、営業利益が同9.4%増の22億92百万円、経常利益が同12.2%増の22億89百万円、純利益が同13.2%増の14億81百万円としている。配当予想は同4銭増配の年間11円80銭(第2四半期末5円90銭、期末5円90銭)で予想配当性向は51.7%となる。
利用企業数増加や利用拡大によってストック型収益である月額課金のシステム使用料が伸長し、ソフトウェア償却費増加や人件費増加を吸収する。売上総利益率は同1.3ポイント低下の71.6%、販管費比率は同1.5ポイント上昇の37.2%の想定としている。
セグメント別(連結調整前)の計画は、受発注事業の売上高が同14.3%増の38億38百万円、営業利益が同7.4%増の18億62百万円、規格書事業の売上高が同28.0%増の12億28百万円、営業利益が同8.3%増の3億55百万円、ES事業の売上高が同20.7%増の14億73百万円、営業利益が同70.5%増の90百万円、その他の売上高が同7.8%増の1億45百万円、営業利益が9百万円の赤字としている。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が44.8%、営業利益が42.3%、経常利益が40.7%、純利益が40.5%と低水準の形だが、利用企業数が増加基調であり、ストック型収益である月額課金のシステム使用料が伸長して増収増益基調に変化はないだろう。
■中期経営計画で18年12月期の受発注5万社と請求書100万社目標
16年2月策定の中期経営計画では基本方針を、フード業界におけるシェア拡大(BtoBプラットフォーム受発注の利用拡大)、電子請求プラットフォームのデファクト化(BtoBプラットフォーム請求書の全業界展開)、BtoB電子商取引プラットフォームの構築(15年12月期の調達資金をシステム開発へ重点投資)としている。
フード業界におけるシェア拡大では、18年12月期までの目標として利用企業数5万社(15年12月期実績3.9万社)およびシステム取引高・外食シェア2兆円・30%(同1.2兆円・16%)を目指す。電子請求プラットフォームのデファクト化では、18年12月期までの目標として、利用企業数100万社(同4.8万社)およびシステム取引高3兆円(同1261億円)を目指す。BtoB電子商取引プラットフォームの構築では、システムコンセプトとして全業界対応BtoBプラットフォーム(同フード業界ASPシステム)を目指す。
目標値には18年12月期の売上高95億円(受発注47億28百万円、規格書15億44百万円、ES28億39百万円、その他4億29百万円)、営業利益36億03百万円、経常利益36億円、純利益24億23百万円を掲げた。配当については個別業績に基づく基本配当性向50%を継続し、17年12月期年間配当13円08銭、18年12月期の年間配当17円48銭を計画している。
そして2020年までに、あらゆる業界にBtoBプラットフォームを提供し、グローバルなBtoBインフラ企業を目指すとしている。積極的な事業展開で中期成長シナリオに変化はないだろう。
■株価は売られ過ぎ感強く反発のタイミング
株価の動きを見ると、7月中~下旬の戻り高値圏1100円台から反落し、8月19日には889円まで調整して6月の年初来安値841円に接近した。第2四半期累計業績が嫌気された形だ。
8月19日の終値897円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS23円34銭で算出)は38倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間11円80銭で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS145円16銭で算出)は6.2倍近辺である。時価総額は約582億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を割り込んだが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感が強い。ストック型収益モデルを見直して反発のタイミングだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)