【電機業界の2017年4~6月期決算】「為替の影響がなければ……」と言える企業も、言えない企業もある
2016年8月18日 15:58
8月12日、電機業界大手8社の2015年4~6月期(第1四半期)決算が出揃った。
全8社が減収。最終増益は日立だけで、会計不祥事から約1年経過し大規模リストラ進行中の東芝は黒字転換した。ソニー、パナソニックは最終2ケタ減益。シャープ、NEC、富士通は赤字決算だったが、3888億円の出資を受けホンハイ傘下に入ったシャープと富士通は赤字幅が縮小している。三菱電機は減収だが営業利益はプラスで、最終減益も1ケタ減にとどまり健闘した部類に入る。
■東芝は黒字転換、シャープは赤字幅圧縮
2016年4~6月期(第1四半期)の実績は、ソニー<6758>は売上高及び営業収入10.8%減、営業利益42.0%減、税引前四半期純利益58.9%減、最終四半期純利益74.3%減の2ケタ減収減益。最終利益の2017年3月の通期見通しに対する進捗率は26.4%。
為替の影響がなければ連結ベースの売上高及び営業収入は3%減だったと説明している。セグメント別では、半導体分野の売上は23%の減収。熊本地震で画像センサーを生産する熊本工場が被災し、その対応費用に加えてカメラ部品の開発中止に伴う減損損失を203億円も計上し、この分野の営業損益は前年同期の327億円の黒字から435億円の赤字に陥った。モバイル事業は34%の減収。スマホの販売台数は大幅減だったが高付加価値機種への絞り込みなど構造改革を進めた効果が出てきた上に、部品調達でドル建て比率が高いため円高がプラスに作用し黒字化した。ゲーム事業は14%の増収。「プレステ4」向けのソフトの売上は好調だった。本格的普及期に入った4Kテレビは世界的に販売好調。
パナソニック<6752>は売上高5.9%減、営業利益12.6%減、税引前利益19.0%減、四半期純利益63.5%減の減収、2ケタ減益と業績悪化。最終利益の2017年3月の通期見通しに対する進捗率は14.9%。
セグメント別では、家電製品など「アプライアンス」は高画質4Kテレビやエアコンが売れて2%増収、72%増益と健闘。住宅用太陽光発電システムの販売が苦戦した「エコソリューションズ」は4%減収、49%減益。映像機器など「AVCネットワークス」は9%減収、120%増益(約2.2倍)、自動車向け部品の「オートモーティブ&インダストリアルシステムズ」は自動車向け液晶パネルの価格低下に苦しみ11%減収、47%減益と、セグメント利益それぞれ差が激しかった。最終利益は円高に伴う海外収益の円ベースでの目減りの他、税負担の増加もあり、第1四半期としては2年ぶりの大幅減益になった。
鴻海精密工業(ホンハイ)グループと戦略的資本・業務提携したものの前期は連結ベースで債務超過に陥り、8月1日付で東証1部から東証2部に〃降格〃し日経平均採用銘柄からも外されたシャープ<6753>。第1四半期は売上高31.5%減、営業損益は赤字額が287億円から25億円に縮小、経常損益は赤字額が333億円から223億円に縮小、四半期純損益(最終損益)の赤字額は339億円から274億円に縮小した。
主力のテレビ、スマホ向けの液晶パネルの販売は低迷したまま。販売単価の低下、円高の悪影響に経営不振によるイメージの悪化も手伝って、太陽電池も液晶テレビもスマホもデジタル複合機も空気清浄機も、主力製品がことごとくその販売を減らし、「コンシューマーエレクトロニクス」「エネルギーソリューション」「ビジネスソリューション」「電子デバイス」「ディスプレイデバイス」の5事業全て減収になった。四半期損益の赤字額は構造改革の効果で縮小したが、6月末時点の累計の債務超過額は750億円で、3月末の312億円からさらに悪化している。
日立<6501>は売上収益7.9%減、調整後営業利益20.7%減、継続事業税引前四半期利益23.1%減、四半期利益19.2%減、最終四半期利益2.7%増の減収、最終増益。最終利益の2017年3月の通期見通しに対する進捗率は28.2%。
海外事業はイタリアの鉄道車両メーカーの買収効果が出たが、円高による収益の目減りで海外売上は国内の6%より悪い9%減。売上高に対しては、日立物流、日立キャピタルや空調事業の事業再編が1350億円、為替の円高が1200億円の減収効果をもたらし、営業利益に対しては事業再編が100億円、円高が150億円の減益効果をもたらしている。海外事業の採算は、原油安の影響を受けた産油国でも景気が減速した新興国でも投資抑制の悪影響を受けたが、特に悪かったのが中国。公的部門のインフラ投資の低迷に加え、建設機械、エレベーター、ATMなどみんな不振に陥った。セグメント別では営業増益だったのは構造改革の効果が出た情報・通信システム部門だけで、建設機械、プラント、社会インフラ関連、高機能材料など他の8部門は軒並み減益だった。
東芝<6502>は売上高1.9%減、営業損益は65億円の赤字から200億円の黒字に転換、継続事業税引前四半期純損益は124億円の赤字から71億円の黒字に転換、四半期純損益は122億円の赤字から798億円の黒字に転換して、黒字決算になった。最終利益の2017年3月の通期見通しに対する進捗率は79.8%もあった。
平田政善・最高財務責任者(CFO)は「半導体や原子力など成長3事業の足元の収益は想定以上」と話す。不適切会計の発覚から約1年が経過して、自己資本比率は7%で財務は傷ついたままだが期間収益では前途に光が見えてきた。中国製のスマホ向け受注が旺盛で、成長分野に挙げているフラッシュメモリーなど半導体メモリの需要が高止まりして売価の下落傾向に歯止めがかかり、半導体事業の業績は上向き。HDDも売上を伸ばし、原子力やエレベーターも堅調。採算面では部材コストの削減、構造改革による固定費削減があいまって、第1四半期は大幅増益になった。
三菱電機<6503>は売上高6.2%減、営業利益9.3%増、税引前四半期純利益9.2%減、最終四半期純利益7.3%減の減収、最終減益。最終利益の2017年3月の通期見通しに対する進捗率は24.5%。主力のFAは為替の円高による円換算の収益の目減り、自動車用機器は三菱自動車の燃費データ不正問題が影響してふるわなかった。損益ベースでは重電システム部門の採算改善が営業増益に寄与したものの、140億円の為替差損、86億円の熊本地震による災害損失を計上した。
NEC<6701>は売上収益11.7%減、営業損益は赤字額が75億円から299億円に拡大。税引前損益は赤字額が44億円から336億円に拡大、四半期損益は赤字額が54億円から203億円に拡大、最終四半期損益は赤字額が56億円から201億円に拡大し、赤字決算。全事業部門が減収で、通信事業者向けのシステムは設備投資が抑えられてふるわず、前年同期に官公庁向けシステムで「マイナンバー特需」「サイバーセキュリティ投資」などの大型案件があった反動も大きかった。