年金積立金の株式運用「従来比率に」―野田佳彦元首相
2016年8月9日 08:12
野田佳彦前総理は厚生年金・国民年金の積立金約140兆円のうち135兆円を運営する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)が2015年度の運用で5兆3000億円の損失を出したことに「安倍政権が株価を押し上げアベノミクスを推進する狙いから、2014年10月に資産構成割合を変更し、株式割合を従来の2倍にあたる5割に引き上げたからだとしたうえで、こうした運用には問題が大きく、従来の運用に戻すよう強く求めている。
野田前総理は8日、年金運用の在り方と政府などの情報公開の在り方など3点の問題を指摘した。情報公開については「例年7月上旬までに前年度の運用結果を公表してきた。2015年度の運用成績も6月末に固まっていた。しかし、参院選投開票日後になったことは、選挙への影響を考慮した『損失隠し』と言わざるを得ない」と断じた。
運用面では「マーケットが経済の実勢を映す鏡でなければならないが、年金資金を投入して株価を下支えするという手法は異常。加えて日本銀行が上場投資信託を毎年6兆円買い入れることを決定した。年金資金を運用するGPIFと日銀資金が主役であるような『官製市場』は市場機能を大きく歪めていないか」と株式市場を歪めることにもなると問題視している。
また、株式市場への5割運用でのリスクについて「ハイリスク資産に国民の老後の生活を賭けてもいいのか。消えた年金記録5000万件は民主党政権下で約3割強、約2兆円分を取り戻すことができた。しかし、年金積立金を博打のように使い損してしまえば取り返すことは不可能」と指摘し、株式の運用割合を従来の割合に戻すべきだとしている。9月の国会でも議論になりそうだ。(編集担当:森高龍二)