拡大するドローン市場 15年は1兆2,410億円、2020年には2兆2,814億円に
2016年8月4日 17:57
矢野経済研究所ではドローン(UAV/UAS)の世界市場の調査を実施した。調査期間は2016年1月~6月、調査対象はドローンメーカー、ドローンサービスユーザー企業、アプリケーション企業等。調査方法は同社専門研究員による直接面談調査ならびに文献調査を併用した。
急速に拡大しているドローンの世界市場は、様々な観点からその成長性が注目されている。ドローンは、無人航空機の俗称で、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)、UAS(Unmanned Aerial System)、RPAS(Remotely Piloted Aircraft Systems)とも呼ばれる。モーションセンサーを活用した姿勢制御技術の発展や衛星測位システムとの連携によって設定した飛行経路を巡航する機能など、操縦技術への依存度が軽減されたことによって、様々な産業分野における商用利用が見込まれている。
調査では UAS(ドローン本体+地上コントロールシステム)とそれによるサービスを含む全体市場としている。なお、コントロールの全てを操縦者に頼るいわゆるラジコンは除外している。世界の軍事用と民間用(産業用、ホビー用、サービス)のすべてを合わせた世界市場規模は、20であった。2015年から 2020年にかけて年平均成長率(CAGR)は 12.9%で推移し、2020年には2兆2,814億円を予測している。世界市場全体では、現状で軍事用が過半を超えているが、2020年までには軍事用と民間用はほぼ半々になるものと予測している。
現時点では、ドローンの最大のマーケットは軍事用アプリケーションである。軍事用ドローンの世界市場規模は、2015 年の 8,068 億円から 2020 年には約 1.2 兆円にまで拡大すると予測した。軍事用ドローン市場は、偵察や戦闘における無人化のトレンドから、従来の有人偵察機を置き換える方向で拡大するが、民間用ドローンに比べると緩やかな成長となる見込みであるという。大型の軍事用ドローンはアメリカが、小型の軍事用ドローンはイスラエルがマーケットを主導しており、軍事用ドローンは、その特徴であるロバスト性(堅牢性)を活かして産業用への転用も進められているが、産業用としてはオーバースペックである場合も多い。
また、2015年の民間用ドローンの世界市場規模は4,053億円であり、2020年には約9,000億円規模まで拡大すると予測している。民間用ドローンの主要マーケットであるアメリカや日本をはじめとする先進国では、ドローンの商用利用には許認可を取得する必要があり、これがホビー用ドローンにも影響を与えている。しかし、ドローンを対象とする規制は発展途上にあり、アメリカは2016 年6月に新たに規制緩和を行ったばかりである。民間用ドローン市場の拡大を牽引する産業用ドローンは、機体やシステム以上にそれらを活用して提供される民間用ドローンサービス市場の伸長が顕著になるものと予測している。
2015年の民間ドローンサービスの世界市場規模は290億円で、2015年から 2020年までの年平均成長率(CAGR)は50.4%で推移し、2020年には2,233 憶円に達すると予測している。なかでも成長率の高いのは点検・検査分野、測量分野になるという。
点検・検査分野は、現行のカメラ搭載機体での画像(映像)撮影による方式だけでもその応用分野は幅広い。今後、ドローンの自律性(Autonomy)の進展や、航続距離(時間)や搭載する積載重量の進化、用途に応じた分析・適用手法の確立などによって、応用範囲は更に広がる可能性が高いものと考えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)