防衛白書で政府「徴兵制に合憲の余地はない」
2016年8月3日 20:19
政府は2016年版防衛白書で徴兵制について「平時、有事を問わず、憲法第13条、第18条などの規定の趣旨からみて、許容されるものではないと考える」と明記するとともに「憲法解釈を変更する余地は全くなく、いかなる安全保障環境の変化があろうとも、徴兵制が『本人の意思に反して兵役に服する義務を強制的に負わせるもの』という本質が変わることはない。したがって、今後とも徴兵制が合憲になる余地はない」とした。
防衛白書では徴兵制について『国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度であって、軍隊を常設し、これに要する兵員を毎年徴集し、一定期間訓練し、新陳交代させ、戦時編制の要員として備えるものをいうと理解している』と説明。
そのうえで「わが憲法の秩序の下では、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべきものとして(徴兵制は)社会的に認められるようなものではない」と明記した。
また「自衛隊はハイテク装備で固めたプロ集団で、隊員育成に長い時間と相当な労力がかかる。短期間で隊員が入れ替わる徴兵制では精強な自衛隊は作れない。したがって安全保障政策上も、徴兵制は必要ない。ドイツやフランスも21世紀に入ってから、徴兵制を止めており、G7諸国はいずれも徴兵制をとっていない」と解説し、徴兵制による「兵役」を憲法が禁止する「苦役」と解釈せず、国民としての「義務」と解釈変更すれば、現行憲法でも可能ではないかとして、徴兵制を懸念する声には、その懸念は全く不要との説明を展開した。
ただし、石破茂地方創生担当大臣は「兵役を苦役と解するのには違和感がある」としたことがある。また、自民党の憲法改正草案では自衛隊を「国防軍」と位置づけ、追記する憲法9条3項では「国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない」としており、事実上、国民に国防を義務付ける解釈が成り立つ規定にもなっているとみられ、憲法9条が改正されれば、当然、政府解釈も変わることになる。(編集担当:森高龍二)