新型出生前診断、3年間で3万人超が受診
2016年7月27日 06:31
従来の出生前診断は、穿刺法で母体を傷つけて流産のリスクを伴う問題があったが、新型出生前診断はわずか20ccほどの血液を注射器で採取するだけであり、母体への負担を大幅に軽減できる。
新型出生前診断は、妊婦の血液からダウン症など3種類の染色体異常を調べることができ、新型出生前診断の臨床研究を実施している病院グループの発表よると、導入から3年間で計3万615人が検査を受け、1.8%にあたる547人が陽性と診断された。
ただ、誤解されがちだが、新型出生前診断はすべての先天性異常を出産前に発見できるわけではない。新型出生前診断は、13トリソミー、18トリソミー、ダウン症候群の可能性を高い精度で予見する検査であり、それ以外の先天性疾患を調べたいとなると、羊水検査などの検査が必要になる。
また、3つの染色体異常についても、確実に見抜けるわけではない。検査結果が陰性であっても、ダウン症候群を患っていないという保証はないのだ。検査の時期についても、妊娠10~18周期の時期でなければ受けることができない。日本産科婦人科学会が2012年にまとめた指針では、対象者は「超音波検査などで胎児の染色体異常の可能性が示唆された妊婦や高齢妊婦」とされている。費用は健康保険が適応されず、自費で20万円程度。「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」の認定施設は2016年6月時点で70施設ある。
集計によると、新型出生前診断で陽性と判定され、羊水検査を受けた458人のうち91%にあたる417人が染色体異常と診断されたという。そのうち94%にあたる394人が人工妊娠中絶を選択した。
一方、陽性と判定されたうち89人は羊水検査を受けておらず、多くは死産だとみられ、89人中13人は研究から離脱して人工妊娠中絶を選んだケースもあるとみられている。
病院グループ事務局の関沢明彦・昭和大教授は、94%が中絶を選択したことを受け、「当事者たちは悩んで苦渋の決断をしている。最終的な判断は尊重されるべきだと考える」と述べた。(編集担当:久保田雄城)