進化を続けるドローン。長時間飛行を可能とする秘密とは?
2016年7月23日 19:47
近年、何かと話題になることの多いマルチコプター「ドローン」。安全面での課題はあるものの、これまでのラジコンヘリやラジコン飛行機などとは比べ物にならない操作性と、ビデオカメラなどを搭載しての空中撮影も容易にできる利便性から、急速に普及が進んでいる。
ドローンは、ラジコンヘリなどのように実際に存在する乗り物をベースに作られているわけではない。あくまで飛行に最適な実用的なデザインが施されているが、それ以上に重要なのが、機体の制御を行うプロセッサと各種センサ技術だ。ドローンの姿勢制御は主に「ジャイロセンサ」が基本となる。
ジャイロセンサとは「回転」や「傾き」などを読み取るセンサで、身近なところではスマートフォンなどにも搭載されている。このジャイロセンサが、常に変化するドローンの姿勢や傾きを検知して、そのデータをプロペラモーターの出力にフィードバックし、空中で機体を持続的に水平に保つように姿勢制御を行っているのだ。
しかし、ジャイロセンサには一つ、大きな課題があった。それは消費電力だ。ジャイロセンサは、加速度センサや地磁気センサなど、他のセンサと比較して消費電力が大きく、それがネックになるアプリケーションへの採用や、ジャイロセンサを常時オンし、回転や傾きを常時検知しておきたいアプリケーションの開発・応用が困難であった。とくにドローンの飛行可能時間はバッテリーに依存するため、消費電力は少しでも抑えたいところ。飛行時間を延ばそうと大きなバッテリーを搭載しても、今度はバッテリーの重量がモーターの負荷となってしまう。理想は、消費電力を抑えて、できるだけ小型のバッテリーで効率よく飛行することだ。
そんな中、電子部品大手のロームグループの Kionix, Inc.,(本社:ニューヨーク州イサカ市)が、消費電力を一般品比で50%も削減した、業界最小の低消費電力の6軸加速度・ジャイロコンボセンサ「KXG07」「KXG08」を開発し、話題となっている。
同製品は、一般的な振幅検出によるセンサ信号検知方式ではなく、Kionix が独自に開発した位相検出による検知方式を採用したことで、増幅回路の小型化に成功し、0.6mAの低消費電力を実現。ジャイロセンサを常時オンしておきたいアプリケーションでも動作時間の延長という観点から新たな可能性を示す。また、間欠動作モードでは、最高0.2mA まで消費電力を減らすことも可能だ。
さらに、MCU との同期機能、4096 バイトのバッファメモリ、外部センサからのデータを取得機能も搭載しており、ドローンだけでなく、スマートフォンやウェアラブル機器、ゲーム機などのモバイル市場、さらには話題のIoT市場など、低消費電力でモーションセンシングを行いたいシチュエーションに最適なセンサ環境を提供可能だという。
こういった技術がどんどん進化していけば、ドローンの可能性も空撮だけに留まらず、輸送や産業分野への応用も進むだろう。将来的には人の乗れるドローンも可能になるかもしれない。これからのドローンの進化に期待したい。(編集担当:藤原伊織)