ドローンで外虫駆除、農薬散布の実証実験―佐賀県など

2016年7月19日 08:23

 佐賀県、佐賀大学、佐賀市に本社を置くITシステム開発のオプティム<3694>が、夜間にドローン(小型無人機)を使って害虫を駆除する実証実験に成功した。3者は2015年8月にIT農業の研究と人材育成で連携協定を締結している。オプティムが、人工知能(AI)を用いた多機能型ドローンを県や大学の見地をもとに開発し、佐賀県大学農学部附属アグリ創生教育センターの圃場で実験を繰り返してきた。

 このドローンは、圃場上空を旋回する際に光源をつり下げて虫を誘引し、薬剤を使わずに高電圧で殺虫できる。夜行性害虫である甲虫やウンカなどに効果が期待され、「自動飛行で寝ている間に害虫駆除」を理想として実用化に向けた研究を進めるとした。

 ウンカ類の害虫は、稲などに深刻な被害をもたらすという。日中は葉の裏に隠れて温存し、薬剤への抵抗性も持つため、従来の防除方法では完全に駆除できない問題があった。

 また、このドローンは、病害虫が発生している箇所を自動で解析して、薬剤を散布することもできる。虫の活動が盛んになる夜間に捕捉・殺虫することにより、効果的な防除方法が確立する可能性が見えてきた。

 将来的には、ロボット掃除機のように自動飛行と充電を反復する「無人化」を検討しているという。県農業試験研究センターの田崎博文所長が「規模拡大が進む一方で農業の担い手が不足する中、農業のIT化は必要不可欠」と述べているように、農業人口の減少と高齢化が問題視されている。

 日本の農業就業人口は、10年で4割ほど減っている。昨年の平均年齢は66.4歳と年々高齢化が進み、農業離れが止まらない。

 3者は一連の研究開発で、生産者の省力化と高品質化の両立を目指すという。消費者は農薬が少ないものを食べたいと願うものだが、無農薬・減農薬栽培は手間がかかるという問題で生産者と利害が対立しているのが現状だ。農業のIT化が進めば、農業の衰退を食い止めると同時に、低価格で安心・安全な野菜が身近なものになるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)

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