【コラム】教職員の“政治的中立性”とは?
2016年7月10日 22:41
自民党が党HPで行っている『学校教育における政治的中立性についての実態調査』について、密告フォームとの批判があがっている。
「憲法を守り、学校と教育に生かそう」をスローガンにしている全日本教職員組合の小畑雅子書記長は共産党機関紙に答え「政権与党が国民に『密告』を奨励するような実態調査をすることは教育基本法にある教育への不当介入そのもの」と問題提起。教職員が政治活動で禁止されているのは「地位利用による政治活動」のみ。
小畑書記局長は共産党機関紙で「実態調査の内容は安保関連法に反対するなというもの。教員を萎縮させ、個人としての政治的自由さえ奪おうとするような流れを許してはなりません」とコメントしている。
現在の自民党HP調査文言では削除されているものの、当初の呼び掛けには「教育現場の中には『子供たちを戦場に送るな』と主張し、中立性を逸脱した教育を行う先生方がいることも事実です」と記されていた。
ネット上では、自民党のこのページに「最初見た時、偽の自民ページかと思った」とのツイートもあったが、「『子供たちを戦場に送るな』が政治的中立性を保っていない?自民党はよほど子供たちを戦場に送りたいらしい」との酷評コメントも載っている。
自民党は調査文のなかで「高校等で行われる模擬投票等で意図的に政治色の強い偏向教育を行うことで、特定のイデオロギーに染まった結論が導き出されることをわが党は危惧している」とも表記している。
一方、教職員組合は文部科学省が6月1日に文科省事務次官名で都道府県知事、教育長宛に発出した「教職員等の選挙運動の禁止等について(通知)」について同月16日に「すべての国民には主権者としての重要な権利として、政治活動の自由に関する権利が保障されている」。通知は「教育公務員も(政治活動の自由に関する権利が保障されている)例外でないことを意図的に欠落させている」と問題点を指摘。
そのうえで「法的に禁止されている行為は『地位利用』のみであるにもかかわらず、『教育の政治的中立性を疑わしめる行為』などの表現を用いて、あたかも教職員は政治的な活動すべてをしてはいけないかのように述べている、通知は問題で、通知の撤回を」と求めていた。選挙後の国会で、教職員の政治活動が「地位利用での選挙活動」のみを禁じていることを、より具体的に示したうえで、教職員が委縮せずに、自身の政治信条を語り、選挙活動できる分かり易いガイドラインを策定する議論が望まれそうだ。
教職員組合が16日に文部科学省に申し入れた背景には「文科省の通知を読みあげ、だから私は一度も選挙に行ったことはない、と胸を張って職員に言う校長がいる。私たちは選挙に行ってもいいのですか、という教員もいる」などの深刻な例があるからだ。
教職員組合は「本来、自分の思想・信条に基づいて選挙に行くべきだと通知すべきではないのか。それがあった後に、してはいけない選挙運動がある、と例示すべき」と文部科学省に誤解が生じないよう適切な対応を求めている。(編集担当:森高龍二)