医療ビッグデータで救える命が増える可能性
2016年7月6日 07:31
これまでの技術では扱えないほどの大容量のデータ「ビッグデータ」。技術の進歩や低価格化により、一般企業などでも日々生成される多様で膨大な量のデータをビジネスに活用できるようになってきた。
ビッグデータの解析技術は、ヘルスケアの分野にも進出。遺伝子情報、活動量、脈拍などの生体情報のビッグデータを解析することで、病気にかかるリスクを推定して最適なヘルスケアを提案したり、健康診断の結果をビッグデータと照らし合わせて医療機関への受診を促したりといったサービスが期待されている。
ヤフー<4689>は、遺伝子検査や体組織系などのセンシングデバイスに基づいて、生活改善を助言するサービス「HealthData Lab事業」を開始し、オーダーメイド医療の実現を目指す。DeNA<2432>は、東京大学医科学研究所との連携により、一般消費者向け遺伝子検査サービス「MYCODE」をスタート。遺伝子検査を行うことで、体質の遺伝的傾向や、がん、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクの傾向がわかるという。
また、ビッグデータの入り口となる生体センサーの開発も盛んで、NTT<9432>は指に装着する小型の血流センサー、東芝<6502>は胸部にゲルパットを張り付けて心電、脈波、皮膚温、体動を測れる生体センサーを発売している。
IT企業もヘルスケア分野への関心が高い。病院にある大量の過去のカルテやレントゲンなどの画像データを有効活用する上で、IT企業の協力は不可欠だ。Googleは2年前にイギリスの人工知能開発企業のDeepMindを買収。DeepMindが開発した囲碁ソフトが人間の棋士に勝利したことが話題になったが、ついに医療業界に特化した取り組み「DeepMind Health」を発表した。専門家と共同で開発したモバイルアプリ「Streams」は、早急な処置が求められる急性腎障害の状態をすぐに判断できるという。
安倍首相は4月の官民対話で、名前を明かさないことを条件に、医療機関が保有する患者データを患者の同意を得ずとも集められる仕組みづくりを表明している。ビッグデータの活用を促し、過剰な治療や検査を防ぐとともに、効率的な新薬の開発に役立てたい狙いがある。
ビッグデータはこれまで救えなかった命を救える可能性を秘めている。健康志向が高まる中、市場はさらに拡大してくだろう。(編集担当:久保田雄城)