ライフケア分野でIoT・行動センシング技術を活用した実証実験がスタート

2016年7月6日 07:44

 少子高齢化が進行し労働力不足が懸念されている現代において、介護やヘルスケアの現場ではデジタル化により人とITが協働して職場環境を改善していくことが今後より重要になってきている。しかしながら、これらの現場においては、人の行動に依存する部分が多くを占めるのが実情だ。

 そこで国立大学法人九州工業大学とIDCフロンティア(IDCF)は、スマートライフケア社会の実現に向けて、産学連携に関わる包括協力協定書に調印した。協定を通じ九州工業大学とIDCFは、IoT、人工知能、ロボティクスを活用して、高齢者の自立支援や介護従事者等の負担軽減などを行うライフケア基盤システムの構築とその実証に取り組んでいく。そして8月には、行動センシングプラットフォームならびにデータの受け取り口となるIoTゲートウェイを、介護事業者に向けIDCFより実証用として提供開始する予定だ。

 協定締結に先立ち九州工業大学では、内閣府最先端研究において、九州大学病院およびNTTコミュニケーション科学基礎研究所と共同して、循環器内科病棟で2年間の看護行動センシング実験を行い、看護師60名からのべ1,655日の看護行動データを収集した。このデータの一部を使って行動認識アルゴリズムを機械学習により構築し、独自の工夫によって既存手法の55.2%に比べて大幅に性能が上回る81.0%の認識精度を達成したという。

 また、情報通信機構(NICT)ソーシャル・ビッグデータ利活用・基盤技術の研究開発において、熊本県立大学、株式会社シーイー・フォックス、九州大学病院と共同して、整形外科病棟フロア全体で40日間の看護行動センシング実験を行い、看護師35名の位置情報と行動情報、患者の属性情報を同意の上で分析し、日々の看護師の行動時間の長短を、看護師ごと、患者ごと、行動ごとに72.7%の精度で予測でき、看護師の業務割り当てに活用できることを示したとしている。

 今回のIDCFとの包括協力協定は、九州工業大学の技術を、クラウドコンピューティングなどのインフラを用いてシステムを一気にスケールアウトすることにより、国内のライフケア分野における課題解決につなげることが期待できるとしている。

 IDCFは、Yahoo! JAPANグループのITインフラ事業者として国内に9か所の自社データセンターを運営し、西日本の最大拠点は福岡県北九州市の八幡製鉄所跡地に、約4万m2の敷地へ複数棟からなる大型のデータセンター群を構えている。現在はデータセンター事業を基盤としたクラウド事業の拡大を推進しており、クラウドでデータを処理するだけでなく、「データ集積地」(データも集積するセンター)となるべくビジネスモデルの変革を進めていく。 (編集担当:慶尾六郎)

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