コストからプロフィットへ スポーツ未来開拓会議が中間報告
2016年6月22日 08:27
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けての国民や企業、あるいは海外からの消費・投資マインドやスポーツに対する関心の盛り上がりが予想される。この機会を最大限に活用することを目的として経済産業省とスポーツ省による「スポーツ未来開拓会議」が「中間報告~スポーツ産業ビジョンの策定に向けて~」を発表した。
スポーツ施設は健康増進を主な目的としてきたこともあり、現状では指定管理者制度を利用した運営が大半を占めその収益の大部分を公的資金で賄っている。スポーツ市場全体が縮小傾向にあり(国内スポーツ総生産02年度約7兆円、2012年度約5.5兆円)、同会議では20年の東京オリンピック・パラリンピックに向けての盛り上がりを利用してスポーツ市場の自律的循環を押し進める意向を示している。
とりまとめでは、基本的な考え方として「すべての国民のライフスタイルを豊かにするスポーツ産業へ」「コストセンターからプロフィットセンターへ」「スポーツ産業の潜在成長力を顕在化し、我が国の基幹産業へ」の3つを提示し、さらに課題として「スタジアム・アリーナの在り方_「スポーツコンテンツホルダーの経営力強化」「新ビジネス創出の促進「③スポーツ人材の育成・活用」「他産業との融合による新たなビジネスの創出」「スポーツ参加人口の拡大」の5つを提示した。
特に注目すべきは「スタジアム・アリーナのありかた」でスポーツを核とした街づくりにとってのポイントとなる。日本政策投資銀行が2013年に行った調査によれば、国内アリーナの運営で収入が委託費を上回っている施設は全体の14%で、これらの施設の運営手法としては一般のスポーツ利用以外での活用(スポーツ興行、音楽コンサート等の文化興行や展示会や式典等)が積極的になされており、収入源の多様化(飲食物販、興行事業、広告、命名権の収入)が見られた。
欧米ではスタジアム・アリーナ周辺にコンサート施設、映画館、ホテル、ショッピング等を併設した複合商業施設「スマート・ベニュー」がスポーツ観戦人口の増加や各施設の利用収益の拡大、利用者の顧客経験価値の向上などの相乗効果を発揮し、地域住民の交流空間としても機能している例もある。スポーツが基幹産業として地域の活性化と市場の自律的循環を促すにはスタジアム・アリーナを中核とした複合型都市開発の成功にかかっていると言えるのではないか。(編集担当:久保田雄城)