米民主党、ロシア系組織からサイバー攻撃を受けトランプ氏の調査資料を流出させる

2016年6月21日 21:22

caret曰く、 米民主党全国委員会 (DNC) のコンピュータが、ロシア政府系とみられる2つの組織からのサイバー攻撃を受けたという。この攻撃によって、米大統領選の共和党候補であるドナルド・トランプ氏について同党が調査した資料が盗み出されていたそうだ。ワシントン・ポスト紙(電子版)が6月14日、DNC関係者やセキュリティ専門家の話を元に報じた(Washington PostEndpoint Protection Blog from Crowdstrikeの投稿時事通信日経新聞CNN.co.jpAFPロイターブルームバーグ)。

 同紙によれば、一連のサイバー攻撃は1年間にわたって行われた非常に大規模なもので、DNCのシステム内の電子メールやチャットが外部からすべて読める状態になっていたという。この攻撃の痕跡をDNCが発見したのは今年4月で、その後調査依頼を受けたセキュリティ企業・米クラウドストライク社によると、攻撃を行ったのは「コージー・ベア」と「ファンシー・ベア」という名称だそうだ。ロシアの情報機関と密接な関係を持ち、ロシア政府に有利な政治的・経済的スパイ活動を行っており、高度な技術を有しているという。

 うち1つはホワイトハウスや国務省の非機密ネットワークの侵入にも成功していたという。また、両グループは協力しておらず、それぞれ独立して侵入したとみられるという。さらに民主党の大統領候補指名を確実にしたヒラリー・クリントン氏やドナルド・トランプ氏本人、共和党の複数の政治活動委員会も標的にしていたとワシントン・ポストは報じている。なお、財務データや資金提供者などの個人情報を盗まれた形跡はないとしている。

 先週末にDNCのシステム修正が行われ、またクラウドストライク社による監視も行われているとのこと。なお、ロシアのペスコフ大統領報道官は、モスクワで「政府または政府機関がこの件に関与していた可能性を全面的に否定する」と述べたという。

 なお、今回盗まれた200ページ超のドナルド・トランプ氏に関する調査資料が、「Guccifer 2.0」を名乗る人物により、ネットメディア企業Gawkerに送付されたという(GawkerCNET Japan)。この人物は100GBに及ぶ財務報告書、資金提供者の一覧、選挙綱領、共和党対策、個人のメールなどのデータを所有していると主張しており、Gawkerが報じたところによれば、ほかにも寄付の登録台帳や戦略ファイルなどさまざまな文書が送られてきたという。この報道は、前述の財務データや個人情報は盗まれていないというワシントン・ポスト紙の報道と矛盾する。

 なお、ロシア政府系クラッカーとしては、今回の動きは異例だという。

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