見直されつつある「痒い所に手が届く」地域密着型ビジネス
2016年6月18日 19:38
価格や組織力では大手にかなわないまでも、「痒い所に手が届く」地域密着型の商売が今、見直されつつある。
例えば、スーパー業界などは、商品の大量一括購買やオペレーションの効率化、POSなどの最新設備を導入しやすい大手スーパーが価格競争力で有利といわれている。イオンとセブン&アイ・ホールディングスの2強体制が着々と進むその一方で、手作り惣菜や、地元の味や食材などを導入しやすい地域密着型のスーパーも息を吹き返しはじめているという。福岡県柳川市の単店舗のスーパー「まるまつ」や、高知県のスーパーマーケット「サンシャインチェーン」などがそれだ。とくに「サンシャインチェーン」は同業者からも大きな注目と支持を集めており、年間の視察が150社を超えるというから驚きだ。
「サンシャインチェーン」の特徴は、サプライズ演出が随所に仕掛けられた店作りと顧客サービスの徹底だが、地元の農家が野菜を持ち寄れたり、スーパーなのに農家が勝手に値段をつけられるコーナーがあったり、また、地域の社交場としても親しまれているという。
スーパー業界だけでなく、住宅業界でも今、地域密着型が注目されている。
圧倒的な資本力で最新の住宅設備を提供する大手住宅メーカーの人気は相変わらずだが、消費増税の先送りや、マイナス金利政策の導入などで揺れる住宅業界において、価格だけでは計れない細やかな住宅サービスを提供する地元ハウスメーカーにも高い関心が集まっている。
地域密着型の場合、全国展開の大手メーカーよりも地元での評判が会社の存続問題にまで直結することから、施工やアフターサービスなどもきめ細やかに対応している場合が多い。また、工務店系の場合、工務店と地方銀行は昔から協働関係にあることから、比較的スムーズにローンを組めるともいわれている。もちろん、最終的には借りる本人の信用が一番に重視されるが、少しでも有利になるのなら有難いという人も多いだろう。中にはローンを組む作業すらも代行してくれる工務店も多い。
また、アキュラホームが主宰する全国工務店ネットワーク「ジャーブネット」も、工務店でありながら、全国規模のネットワークで連携することにより大手ハウスメーカーに匹敵するスケールメリットを発揮している。約18年にわたって全国のユーザーに「良質な住宅を適性価格」で提供しており、その数は12万棟にも及ぶ。また、ジャーブネットではこの度、2008年以来8年ぶりに工務店インキュベーション事業(優良工務店育成)の再開を発表しており、ジャーブネットの会員工務店も現在の会員数よりも約50社増となる300社を目指し、今後益々活発な活動を行っていく。
いずれにしても、地域密着企業の強みとは、大手メーカーのブランド力に勝るとも劣らないきめ細やかなサービスだろう。顧客の「痒い所に手が届く」サービスに目を向ければ、大手にも充分に対抗できるはずだ。(編集担当:藤原伊織)