「迷惑客拒否」と民泊がもたらすメリットと問題点

2016年6月17日 07:50

 訪日客のさらなる増加を見込み、空き部屋などに有料で宿泊できるようにする「民泊」に合わせて、「迷惑客」の宿泊を断れるように旅館業法を見直す方針であることを厚生労働省が10日の有識者会議で示した。終戦直後の1948年に施行された同法では、誰でも寝場所を確保できるように原則として宿泊拒否を禁じている(伝染性疾病がある客もしくは賭博などの違法行為の恐れがある客を除く)。

 世界的に拡大を見せる民泊の大手仲介サイトでは、宿泊客から民泊提供側への評価だけでなく、民泊提供者側が迷惑行為の有無を登録客ごとに評価して、安全を担保するシステムが導入されている。現在は多くの宿泊施設があり、時代が変わって拒否制限の意義が薄れているとし、厚生省は民泊を普及させる上で迷惑客拒否を認める必要があるとした。

 法改正が実現され、「女性だけ宿泊可」「大人専用」などの営業ができるようになれば、利用者の選択肢が広がる可能性がある。とはいえ、法改正後も障害や人種による差別など、合理的な理由ではない拒否はできないようにするとしているが、差別の線引きが難しそうだ。

 一方、民泊にもメリットと問題点が潜んでいる。メリットとしては、訪日客の増加による客室不足の解消を図れる他、物件を所有していなくても賃貸して転貸すれば、所有コストをかけずに民泊ビジネスを始めることができる。また、料金もホテルに比べて安いとなれば、訪日客にも喜ばれるだろう。

 問題は、マンションの場合、管理規約の中で民泊禁止と明記されていなければ、民泊に利用できるとも禁止されているとも取れるケースがある。マンションは一つの建物に価値観、職業、性別の異なる人たちが共同で利用しているため、解釈の違いがトラブルの引き金になりかねない。最近では、民泊禁止を明言している物件もある。

 治安や衛生面での問題も予想される中、一定のルールを設ける必要があるだろう。迷惑客拒否と民泊、いずれもモラルが問われる問題であることには違いない。(編集担当:久保田雄城)

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