押さえておくべき「CSRウェブでの情報発信、4つのポイント」【連載第2回】

2016年6月14日 19:27

 【連載第2回】近年、CSRの領域におけるWEB活用型コミュニケーション(デジタルコミュニケーション)の重要度が高まっています。この連載では、CSR情報のWEBサイト制作におけるポイント、ソーシャルメディアの活用方法など、具体的な事例を紹介しながら、CSR担当者が取り組むべき様々な課題について分かりやすく解説します。連載「CSRデジタルコミュニケーション入門」第2回の今回は、CSR情報発信「4つのポイント」の中から「アクセス解析」についてご説明します。

押さえておくべき「CSRウェブでの情報発信、4つのポイント」【連載第2回】

記事のポイント

●CSR情報発信のためのウェブサイトがなぜ必要か

●CSRウェブ4つのポイント

●アクセス解析はPDCAの基本


 *この連載記事は2016年3月発行の書籍『CSRデジタルコミュニケーション入門(著:安藤 光展, 猪又 陽一, 江田 健二)』の内容をもとに再編集しお届けしています。
http://g10book.jp/book/info/release/csrbook

前回までの記事はコチラ

●連載第1回:わかってはいるけれど・・・なかなか手が回らない!?CSR担当者の本音

http://biblion.jp/articles/BUa7G

CSR情報発信ウェブサイトはなぜ必要か

 前回記事で、自社のCSR活動を発信する手段としてCSR情報のウェブサイトがあり、CSR担当者の方が実際にウェブサイト作りに取り組まれていると述べました。それではなぜ報告書のような従来の情報発信手段だけではなく、CSR情報のウェブサイト制作に力が注がれ始めているのでしょうか。

 これにはいくつかの理由がありますが、今回はウェブサイトを活用することにより、より広い層に対して情報を発信することができるという点について触れたいと思います。

より広い層への情報発信

 私がCSRのお仕事を始めさせていただいた2005年ごろは、ウェブサイトで情報を発信していこうというよりはCSR報告書(冊子)による発信が主体であったように思います。当時は、当然のことですが、CSRについての情報が伝わるのは報告書(冊子)を手にとった人だけでした。とても関心が高い方々ですが、人数とはしては、それほど多くはないでしょう。

 しかし、2010年ごろには、ウェブサイトも充実させるべきだという潮流が生まれ、報告書を発行する一方でウェブサイトにも力を入れていくようになりました。そして、ここ数年は報告書やウェブサイトに加え、ソーシャルメディアでも情報を発信しようという流れが生まれてきています。

 こうして1つの情報を様々な媒体で発信することによって、より多くの人に思いを伝えることができるようになることは非常に大切です。発信手段が拡大することにより、多くの年齢層の方に自社のCSRの情報を届けられることになります。

 ウェブサイトやソーシャルメディアは、インターネット環境があれば、いつでもどこからでも見ることができます。自宅や会社のパソコンからはもとより、手元にあるスマートフォンからも見ることができます。

 例えば、ある人がたまたま気になることを調べながら、ネットサーフィンしているうちに、偶然自社のウェブサイトを訪れてくれることもあります。こうしたチャンスを活かすためにも、ウェブサイトやソーシャルメディア上で自社の商品やサービスについて情報発信するのはもちろんのこと、CSRについての掲載を強化することは、必然の流れと言えます。
顧客へのリーチのイメージ

顧客へのリーチのイメージ

 発信手段を多様化し、より多くの人に伝わるようにしていく。特に学生は、報告書よりソーシャルメディアやウェブサイトのほうが、より親和性が高いのではないでしょうか? 自社のことを学生に伝えていきたい場合にはソーシャルメディアの利用を増やしていくべきかと思います。

 そこで次に、より多くの人に適切に情報発信を行うための4つのポイントを紹介させていただきます。

<CSRウェブ情報発信・4つのポイント>

 ポイント①:アクセス解析による現状分析
 ポイント②:サイトの内容の見直しと充実
 ポイント③:ユーザーとのコミュニケーションの強化
 ポイント④:外部メディアの活用

 まずは、ポイント①「アクセス解析による現状分析」について説明しましょう。

アクセス解析でまずは「現状把握」を!

 1つ目のポイントはアクセス解析によるCSR情報のウェブサイトの現状把握です。これはみなさんのCSR情報のウェブサイトの「どの部分を、どのくらいの人が、どのように見ているか」を把握しましょう、ということです。

 何かのお仕事をされる時には、まずは現状の分析をし、それに基づいてその後の方針を決定するだろうと思います。CSR情報のウェブサイトを改善する際にも、そのサイトの状況に基づいて内容を検討することが大切です。この現状分析のための方法(ツール)がアクセス解析なのです。

 アクセス解析によって、現状分析や効果測定が可能になります。CSRコミュニケーションにおいて、デジタルコミュニケーションが重要になってきている1つの理由になっています。

アクセス解析で何がわかるのか

 アクセス解析ツールは、お店に設置されている防犯カメラのような役割を果たしてくれます。お店に設置された防犯カメラを覗いていると、お客様の流れや従業員の働きぶりがわかりますね。アクセス解析ツールは、同じようにウェブサイトを訪れた人の動きを詳細に把握する(データ化する)ことができます。アクセス解析によって得られる情報は主に下記の5つです。

 ・何人の人がそのページに訪れたのか
 ・各ページが何回ほど閲覧されたのか
 ・どのページがよく見られているのか
 ・ユーザーはどのページから飛んできたのか
 ・ユーザーはどのようなキーワード検索の結果サイトに訪れているのか

ターゲットの特定に大活躍

 サイトを運営している方の多くが悩まれることとして、自社サイトのターゲットを誰にするかということがあると思います。ターゲットを誰にするかによって使用する媒体も変わってきますので、ターゲットを適切に特定することはとても重要です。

 アクセス解析ツールは、ターゲットの特定にも非常に役立ちます。アクセス解析により、CSR情報のウェブサイトに訪れたユーザーのIPアドレスがわかります。IPアドレスとは、会社や組織などにユニークに割り当てられた数値です。電話番号や郵便番号のようなものだと考えていただけると少し身近に感じるかと思います。

 IPアドレス情報は、そのほとんどが公開されています。「そのユーザーが大学などの学校からアクセスしているのか?」、「企業(例えば競合企業)などからアクセスしているのか?」、「自治体や政府機関なのか?」、「また、一般の消費者なのか?」などを判断することができます。

 CSR情報のウェブサイトのターゲットをどのように設定するかでお悩みの方は、IPアドレスを元に現在訪れるユーザーを整理するのがよいのではないでしょうか? 個別のIPアドレスが、どのページを閲覧しているかを確認することもできるので、ターゲットユーザー別に整理してみるのもよいかもしれません。

 また、自社のウェブサイトを見ているのは、消費者などの外部の人とは限りません。社内からどれくらい見ているかもIPアドレスを確認することにより、正確に把握することができます。従業員がどれだけ自社のCSRのウェブサイトを見ているのか? 自社のCSRに関心をもってくれているのか? などを把握することができます。

 一例ですが、春になるとCSR情報のウェブサイトのアクセス数が普段の倍くらいになる企業がありました。アクセス解析ツールでIPアドレスを確認したところ、各大学からのアクセスが原因であることがわかりました。

 就職活動時期の大学生が、就職先として興味のある企業のCSR活動を調べるのは当然のことですね。そこで、その企業ではアクセス解析結果をもとに学生がよく見ているコンテンツを割り出し、大学生向けのコンテンツを充実させることにより、就職希望者のニーズに応えることができました。

ユーザーの使用するデバイスに注目しよう

 アクセス解析ツールを用いると様々なデータを入手することができますが、ユーザーがどのデバイス(機器)でウェブサイトを閲覧しているかを忘れずに確認するようにしましょう。

 最近はパソコンからではなく、スマートフォンからの閲覧が多いサイトも増えてきています。BtoCビジネス(家庭や一般消費者向けのビジネス)をしている企業のサイトではその傾向が顕著です。スマートフォンは、パソコンに比べて、画面サイズが4分1程度以下と小さいので、表示できる情報に限りがあります。また、指でスクロールしながら流し読みするユーザーも多く、目にとまるようにわかりやすく情報を表示していくことが大切です。

 私の会社が以前行なった調査結果では、ある企業のCSR情報のウェブサイトの訪問者のうち、6割以上の方がスマートフォンから閲覧していることがわかりました。対してパソコンからの訪問は3割強でした。ちなみにタブレットからの閲覧は1割弱でした。
 もしCSR情報のウェブサイトの担当者がこのような状況に気づかない場合、どのような問題が起こりうるでしょうか。
 
 CSR担当者がサイトの改善案を検討する際に、パソコンでのみサイトの再確認を行なった場合、スマートフォンで閲覧した際に生じている問題に気が付かないまま放置してしまうことが考えられます。
 例えば、パソコンでは読みやすい内容でも、スマートフォンの画面では読みにくくなってしまっていたり、またスマートフォンでは操作しにくいレイアウトになっていたりといった問題に気づくことができません。こうした場合、残念ながら、サイト改善の努力の多くが無駄に終わってしまいます。

 アクセス解析ツールを利用する際には、ユーザーがどういうデバイスを使ってサイトを閲覧しているのかを忘れずに確認しましょう。そしてユーザーが用いているものと同じデバイスでもチェックを行なうことが必要です。

解析ツールのご紹介:Google AnalyticsとClickTale®

 今後のご参考として、ここではアクセス解析用のツールを2つご紹介しますGoogle AnalyticsとClickTale®というツールです。

●Google Analytics

 1つ目のGoogle Analyticsとは、検索エンジン大手のGoogleが提供している無料のアクセス解析ツールです。【図8-2】Google Analyticsは、基本無料で利用できるので、ほとんどの企業のウェブサイトにはGoogle Analyticsが導入されているのではないかと思います。まだご覧になったことのない方は、ウェブサイトを管理されている情報システム部などの部署の方にお願いして、一度ご覧になってみてください。

 *Google Analytics
https://www.google.com/intl/ja/analytics/

 どのくらいの人がサイトを訪れているのか、どのページに何分くらい滞在しているかなど、興味深いデータを見ることができるはずです。Google Analyticsが導入されている場合、CSR情報のウェブサイトの部分のみのアクセス解析結果を閲覧することも可能ですので、他の部署の情報を勝手に閲覧してしまうなどの問題も起こりません。

 全般的に非常に使いやすいツールですので、初めの一歩としておすすめです。また、これから新しく自社のウェブサイトにGoogle Analyticsを設置する場合も10分程度で設置可能です。
アクセス解析ツール:Google Analytics

アクセス解析ツール:Google Analytics

●Google Analyticsを使ったPDCA


 ここで、簡単にGoogle AnalyticsでのPDCAフローをご紹介したいと思います。【下図】

 まず、PDCAのPとDのPlanおよびDoの部分を考えます。

 例えば、就職活動中の学生に自社のCSRについてウェブサイトを通じて知ってもらいたいと考え(Plan)、学生に向けた情報発信を行ないます(Do)。

 その結果をアクセス解析ツールのGoogle Analyticsの管理画面からCheck(PDCAのCにあたる)します。Checkの中で、IPアドレスよりどの大学のユーザーがサイトの中のどのページを多く閲覧しているか、また何ページほど見ているかなどもチェックできます。

 Checkの結果、予想よりもあまり見られてないページが発見できた場合、ページのレイアウトを変更して目立たせるなどのAction(PDCAのA)を実行することができます。

 こちらが読んでほしい情報と、実際に伝わっている情報のズレを把握し、次の改善のアクションを起こすことができます。
PDCAサイクルの活用

PDCAサイクルの活用

●ClickTale®

 次に、ClickTale®についてです。ClickTale®とは、海外のアクセス解析ツールです。こちらは有償ですが、より多くの機能を備えたツールとなっています。ClickTaleの機能を2つほどご紹介します。【下図】

 *ClickTale®日本サイト
https://www.ctale.jp/

 1つ目は、少し驚くかもしれませんが、サイトに訪れたユーザーのマウスの動きを録画できる機能です。これにより、ユーザーのサイト上での動きが手に取るようにわかります。

 ユーザーは、注目しているところにマウスを動かしていく傾向がありますので、ページのどこにマウスを置いているか? どのボタンを押そうとしてやめてしまったのか? サイトのどの部分をじっくりと読んでいるのかなどがわかります。あたかも後ろからPCの画面を垣間見ているような形で知ることができるのです。
 
 2つ目は、ユーザーに実施してほしいアクションを設定しておくことで、途中、どの部分でやめてしまったのか(離脱率)を詳細に計測できる機能です。

 最終的にアクションを起こしてくれたユーザーのデータからわかることも多いですが、途中でアクションをやめてしまったユーザーのデータからもわかることが多いのです。目的のページには訪れたけれど、フォームへの入力をしなかったとか、入力の途中でやめてしまった、などユーザーの行動データを容易に分析することができます。

 有償のアクセス解析ツールは、その他にもたくさん販売されています。Google Analyticsでの解析では物足りないなと思われる場合は、検討されてもよいかと思います。
アクセス解析ツール:ClickTale®

アクセス解析ツール:ClickTale®

 次回は、ポイント②:サイトの内容の見直しと充実、ポイント③:ユーザーとのコミュニケーションの強化、ポイント④:外部メディアの活用、についてご説明します。

 (次回に続く)

この記事の話し手:江田健二さん

この記事の話し手:江田健二さんRAUL株式会社 代表取締役。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社の顧客管理プロジェクト/会計システムリニューアルプロジェクト、大手化学メーカーの業績管理プロジェクト/物流システム改革プロジェクト等に参画。同社で経験したITコンサルティング、エネルギー業界の知識を活かし、2005年にRAUL株式会社を設立。「環境・エネルギー×デジタルテクノロジー」をキーワードに、環境・エネルギービジネスの推進や企業のCSR活動を支援している。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人エコマート運営委員も務める。
CSRデジタルコミュニケーション入門
via www.amazon.co.jp

CSRデジタルコミュニケーション入門


¥1,415
本書は、企業におけるCSR担当者はもちろんの事、広報やIR、経営企画など、コーポレートコミュニケーションに携わる全てのビジネスパーソンに役立つ内容となっています。現代のCSRについて、どなたにも読みやすく、理解しやすく、そしてすぐに実践できる内容としてまとめられた一冊です。
http://g10book.jp/book/info/release/csrbook
販売サイトへ

連載一覧

元のページを表示 ≫

関連する記事

魅力的なCSRウェブはこう作る。基本ポイント再チェック!
わかってはいるけれど・・・なかなか手が回らない!?CSR担当者の本音【連載第1回】
“子供より先に死ねない親たち”の思い
障害を持って生まれた娘が教えてくれた、インクルージョンの大切さ
答えられますか? 電力自由化に踏み切った本当の理由

関連記事

最新記事