NYの視点:イエレンFRB議長、経済には楽観的、米5月雇用統計に失望も

2016年6月7日 07:18


*07:18JST NYの視点:イエレンFRB議長、経済には楽観的、米5月雇用統計に失望も

ネガティブショックとなった米国の5月雇用統計を受けて連邦公開市場委員会(FOMC)を率いるイエレンFRB議長の講演では、米国労働市場、経済の判断や見通しに焦点が集まった。イエレン議長は「条件が合えば緩やかな利上げが適切になる可能性がある」と、FOMCが依然利上げの軌道上にあることを確認した。また、金利はいずれ段階的に上昇する必要があると繰り返した。ただ、5月末のハーバード大のイベントにおいて示した次回利上げのタイミングに関しての言及は削除した。イエレン議長は同イベントで「今後数か月内に条件が合えば緩やかな利上げが適切になる可能性がある」と指摘していたことから、市場では一時6月、または7月の利上げ観測が強まった。

一方で、議長は5月雇用統計に関して、「失望し、見通しに疑問を与えた」と懸念を表明。ただ、「1ヶ月分の指標を過剰に深読み過ぎないことが重要だ」と指摘した。また、「他の労働関連指標は楽観的だ」としたほか、労働市場のスラック(たるみ)も「取り除かれつつある」との楽観的な見方も示した。労働市場の展開を注意深く監視することが必要と考えているようだが、見通しを大幅に転換させるほどの状況は感じとれない。5月雇用統計発表後の発言では、アトランタ連銀のロックハート総裁、クリーブランド連銀のメスター両総裁も「米5月雇用統計を受けて、自身の見通しを変えることはない」と表明している。

イエレン議長は経済に関しては比較的楽観的な見通しを示した。最近の指標は4-6月期の国内総生産(GDP)での成長ペースが加速する可能性を示唆していると指摘。1-3月期の経済を圧迫していた中国の状況も安定してきたとし、海外の逆風も「解除されつつある」と注意深く楽観視していることを明らかにした。また、今までインフレを抑制してきた原油安、ドル高の流れも一段落しており、インフレが今後上昇すると見ている。賃金に関しても、ようやく上昇する兆しが見られると楽観的な見通しを示している。

米国金利先物市場でも6月の利上げ確率は低下したものの、米国の金融政策が利上げ軌道にあることは変わらずとの見方からドル買いが継続した。

■イエレンFRB議長の懸念点
*内需の脆弱さ
*海外の経済状況
*生産性の成長
*インフレ見通し《NO》

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