搭載増える乗用車の自動制御ブレーキ 性能のバラツキに注意が必要

2016年6月5日 14:14

 近年、いわゆる「自動制御ブレーキ」を搭載した自動車が増えている。しかし、その性能には自動車モデル間でかなりのバラつきがあり、必ずしも衝突回避が保証される訳ではない。

 2010年に富士重工<7270>のスバルが「アイサイト」の自動停止による衝突回避機能を発表し、約10万円という手頃な価格と「ぶつからない車」というキャッチフレーズで人気を得たことが、自動ブレーキの市場拡大の契機となった。同時に「自動ブレーキシステム搭載車=ぶつからない車」というイメージが一般に広まることになった。

 JAFが行ったアンケートで、約半数のドライバーが自動ブレーキを「ぶつからないよう、勝手にブレーキをかけてくれる装置」と誤解していることが分かった。自動ブレーキは正確には「衝突被害軽減ブレーキ」と呼称され、警告音で危険を知らせ、ドライバーの反応が無ければ強制的にブレーキングする機能を持つものだ。減速による衝突被害の軽減効果は望めるが、衝突回避が義務付けられているわけではない。必ずしも、ぶつからない車である訳ではないのだ。

 衝突安全アセスメントを行うJNCAP(独立行政法人自動車事故対策機構)では、停止車両に向かって試験車を直進させる衝突回避試験を行い、採点結果や試験動画を公開している。「アイサイト」を搭載したスバル車をはじめとして、時速40km走行の実験でも、相手車両の手前で停止し衝突回避するモデルもあるが、30km走行でも停止しきれずに車両にぶつかるモデルもある。この性能差はセンシングシステムに負うところが大きい。例えば、遠方の障害物検知に優れて悪天候にも強いが人間を検知できない「ミリ波レーダー」と、人の検知が得手だが天候に影響される「ステレオカメラ」を併用すれば、高額だが検知力は上がるし、「赤外線レーザー」のみを採用すれば、低コストだが検知距離は短いシステムとなる。

 ユーザーがそれらの特徴をよく理解して、目的に合った車を選べれば良いのだが、各自動車メーカーが予防安全システムに自由な名称をつけている現状では、あるモデルがどこまでの衝突回避能力を持っているのか解りづらい面がある。性能に合わせた統一名称など、各社の自動ブレーキ性能を横並びで比較しやすくなる様な改善が望ましい。(編集担当:久保田雄城)

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