日本の住宅地にレジリエンスを 高齢化・過疎からの回復を目指して

2016年5月29日 07:56

昨今、「レジリエンス」という言葉を頻繁に聞くようになった。レジリエンスとは、「強靱さ」や「回復力」、「弾力」と訳される言葉で、しばしば、自然災害や経済危機などの様々な危機的状況から立ち直る意味で用いられることが多い。

 しかし、それらの大きな危機だけでなく、もっと身近な危機にももちろん、レジリエンスは必要だ。

 例えば今、古都京都では町家の再生が課題となっている。京都には居住用・事業用として幅広く利用されている木造の古民家「町家」がある。古いものでは百年単位のものも珍しくない。そんな町家が京都の都心部に約4万8千軒存在しているが、高齢化や空洞化で住む人がどんどん減って、空き家が増えているという。

 住宅というのは不思議なもので、人が住まわなくなると急激に劣化してしまう。元々古い住宅だけに、京町家にとっては深刻で、今日の景観や風情を残すためにも大きな課題となっている。そこで、京都市やNPO法人京町家再生研究会などが中心となって、京町家の現代的役割を評価し、保全・再生に関わる課題を整理したうえで、取り組むべき21項目の内容をアクションプラン21としてとりまとめて、京町家再生プランを推進している。

 その結果、京町家の風情溢れるレストランやゲストハウスなどの店舗利用をはじめ、リノベーションして海外からの移住者を迎え入れるなど、京町家の再生と保全が徐々に進み、レジリエンス効果を発揮し始めている。

 古民家だけでなく、成熟した住宅地やニュータウンなどにもレジリエンスは求められている。日本各地には様々な住宅地があるが、団塊の世代、バブル期などに作られた新興住宅地は今やゴーストタウン化の道をたどりはじめているところも珍しくない。少子高齢化や空き家増加の深刻化は今後益々、加速度を増していくことだろう。

 そんな中、国土交通省では平成25年度より「住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業」を採択し、既存住宅の活用・流通の促進に向けた事業の公募を行い、優れた事業提案に対する補助を行っているが、平成26年度に選ばれた「かわい浪漫プロジェクト」が、今年3月、「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2016」において最優秀レジリエンス賞(まちづくり・コミュニティ)を受賞した。

 「かわい浪漫プロジェクト」は、パナホーム株式会社<1924>、パナホーム不動産株式会社、およびパナソニックリフォーム株式会社が、奈良県北葛城郡河合町の西大和ニュータウンにある星和台・中山台・広瀬台・高塚台、3578世帯を対象に行っている、既存住宅の活用・流通の促進に向けた事業提案だ。住宅の実態調査や住民への意向調査を実施し、住宅地の現状や要望などの分析・共有化を行っている。また居住者の悩みなどにワンストップで対応できる相談窓口を設けたり、周辺地域や近隣都市部に居住する若年層に向けて情報発信を行い、居住誘致を図るなどの活動を行っている。

 当然ながら、過疎化の問題は西大和ニュータウンだけに限らず、全国的なものだ。将来に先送りするのではなく、今取り組むべき問題であり、そのためにも、今回の「かわい浪漫プロジェクト」は日本全国が強力なレジリエンスを持つためにも大きな意味があるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)

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