視覚障がい者に読書の楽しみを―大日本印刷が電子図書館システムを開発
2016年5月27日 10:35
大日本印刷<7912>と日本ユニシスなどは共同で、視覚障がい者が電子図書館を利用する際に、音声読み上げとキーボード操作で読みたい本を探し、借り、読む(聞く)ことを独力でできる閲覧用ウェブブラウザを搭載した電子図書館システムを開発した。
2016年4月に「障害者差別解消法」が施行され、全国の公共・大学図書館で情報へのアクセスのしやすさを確保することが求められており、このシステムによって、視覚障がい者が読書を自立的に楽しむことができる環境を提供するとしている。
日本国内の視覚障がい者は、弱視も含めて約31万人(国民の約0.2%)で、高齢によって視力の低下を感じている人を合わせると、その総数は約164万人(同約1.3%)になる。視覚障がい者が出版物を読む(聞く)ときに多く利用する図書館ボランティア等による朗読サービスは、挿絵のイメージ紹介など文字以外の情報も伝えており、視覚障がい者にとって不可欠なものだ。
電子書籍には、文字サイズの変更や音声による自動読み上げなどの機能が充実してきており、視覚障がい者が自立的に出版物を読む(聞く)ことができる電子図書館システムの環境整備に期待が寄せられている。人の手による録音図書や点字図書の作成には時間がかかるが、パソコンやスマートフォン経由で電子図書館システムを活用すれば、視覚障がい者も他の利用者と同じタイミングで、自力で本を選んで読むことができる。
現在、大日本印刷、日本ユニシスなどがボイジャーの協力のもと提供している「電子図書館サービス TRC-DL」の電子図書館システムは、ウェブアクセシビリティ規格のJIS-X8341ガイドラインに配慮し、健常者には分かりやすい画面構成となっているが、視覚障がい者の多くが利用するパソコンやスマートフォンの画面読み上げソフトに適合していないことが課題となっていた。
今回、社会福祉法人三田市社会福祉協議会(兵庫県三田市)と「公共図書館で働く視覚障害職員の会」の協力を得て、視覚障がい者が独力で読みたい本を探し、借り、読む(聞く)読書環境を実現するための要件と課題を抽出し、従来の「電子図書館サービス TRC-DL」の機能を拡張し、その要件と課題に対応した電子図書館システムを開発した。
今後は、電子図書館サービスを利用する生活者や図書館からの要望を取り入れ、機能を拡充しながら、3年間で200図書館以上への導入を行うとしている。(編集担当:久保田雄城)