【コラム】国の中枢組織の人事の過ち「社会を蝕む」人災
2016年5月14日 21:28
「地震はまさに『天災』だが、国の中枢に位置する組織の、人事の過ちは間違いなく『人災』として、社会を蝕むことになる」。
強い警鐘だ。今任期で勇退を決めている民進党の津田弥太郎参院議員が13日の参院本会議で安倍晋三総理に贈った「政治家としての遺言」だ。安倍総理の耳には届かなかったようだ。総理答弁を聴く限りだが。
この日、参院本会議で政府財政演説への質問で、津田議員は「私のこの世界における遺言だと思って聞いてください」と前置きし、国民からすれば、至極、当然の提案を行った。概要を紹介したい。皆さんはどう受け止めるだろうか。一読願いたい。
津田議員は「様々な機会を捉え、産業競争力会議に巣食う『政商』について問題点を指摘してきた。政商とは三省堂の新明解国語辞典によると『政治家と結託して大もうけをたくらむ商人』を指す。新興ビジネスの経営者として、政府が大所高所から、竹中平蔵、三木谷浩史、両氏のアドバイスを受けること自体、否定しません」と名指し、政策提言が我田引水にならないよう適切な対応をするよう強く求めた。
言い換えると、産業競争力会議の公平を期するための担保を提起した。津田議員はこの中で「人材ビジネス大手の会長(竹中平蔵氏)が、労働市場の流動化に関与すること、医薬品のネット通販会社を傘下に持つ経営者(三木谷浩史氏)が、薬のインターネット販売解禁に関与することなどは絶対に認めるわけにはいかない」と断言した。
「これがもたらす害悪は、労働移動支援助成金を巡る顛末が如実に物語っているではありませんか」と指摘もした。
そして「この機会に、産業競争力会議のメンバーを見直すか、百歩譲って、自らの企業に直接関わる分野については議論に参加させない。そのことをこの場で約束して下さい」と安倍晋三総理に警鐘を鳴らし、対応を強く求めた。
良識ある国民なら当然の訴えだと理解するはず。ところが、安倍総理は「産業競争力会議の民間議員は、それぞれの所属する組織の立場を離れ、公共の利益のために会議に参加頂くとともに、『最終的な政策決定は内閣の責任で行っている』。そのため『自らの企業に直接関わる分野については議論に参加させない』とのご指摘は当たらない」と答えた。
津田議員はこの答弁を自席で聴きながら、少し笑って腕組みし、背もたれにもたれた。呆れたのだ。同僚の民進党・蓮舫代表代行も右手を頬にあてて頭を抱えた。
民間議員の名前まであげて、具体的な懸念材料を提起したにもかかわらず、「政策決定は内閣の責任で行っている」から大丈夫といったわけだ。産業競争力会議に民間企業の経営トップや相談役が民間議員として顔を並べる一方、労働界のメンバーは一人も入っていない。以前、このアンバランスを指摘したことがあるが、国の政策提言の場がバランスを欠いたものでは、まさに政商の場になってしまうのではないか、危惧せざるを得ない。
安倍総理は少なくとも「自らの企業に直接関わる分野については議論に参加させない」程度の賢明さを持つべき。メンバーを信頼していないということにはならない。会議から生まれる政策に国民の信頼を得るために必要な措置である。改善されるまで、野党には強く、国会の場で問い続けて頂くことを期待する。(編集担当:森高龍二)