NYの視点:米国の雇用は依然堅調、失業保険申請件数の予想外の増加は特別要因

2016年5月13日 07:25


*07:25JST NYの視点:米国の雇用は依然堅調、失業保険申請件数の予想外の増加は特別要因

米国労働省が発表した週次新規失業保険申請件数の最新は前週比2万件増の29.4万件と、減少予想に反して前回から増加し昨年2月末以降1年超ぶりの高水準となった。先週末発表された4月雇用統計も非農業部門雇用者数が予想を下回り失業率も予想外に下げ止まったことに続き、雇用市場の伸びが停滞したとの警戒感が一時広がった。米国経済の中で確実に順調な拡大を見せていたのは雇用市場であったことから、米国の利上げペースにも影響を与えるとの懸念もいったん浮上。

しかし、ほとんどのエコノミストはニューヨーク市の学校の春休みという季節的要因が影響したと指摘。懸念するにはあたらないとの見解を示した。教員以外の学校職員(スクールバスの運転手、カフェテリアの職員など)は、学校が1-2週間の休校中、失業保険を申請することが容認されているため。毎年、春休みの期間にはずれがあるため、季節的要因として調整することも困難だという。

また、失業保険申請件数の30万件割れは62週連続で1973年来で最長となったほか、変動を除いた4週平均は26.8万件と前回25.8万件から増加したものの依然として低い水準。4月雇用統計のヘッドライン指数が雇用の拡大ペースの鈍化を示したが、賃金は上昇の兆候が見られるほか、広義の失業率(U-6)や長期失業率が低下、週平均労働時間も増加した。また、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が労働市場のたるみ具合をはかる上で注視している最新、3月のJOLT(求人労働移動調査)求人件数も過去2番目の高水準を記録するなど、労働市場のたるみの解消傾向が続いている証拠もある。6月連邦公開市場委員会(FOMC)までには5月の雇用統計も発表される。

2016年のFOMC投票権を有するジョージ米カンザスシティー連銀総裁や、通常はハト派として知られるローゼングレン米ボストン連銀総裁は、「現在の経済の状況からすると金利は低すぎる」との見解で、「市場は米国経済に関してネガティブ過ぎる」と言及。同時に、過剰な低金利を過剰に長期にわたり維持することでリスクが生まれると逆に警告。米国経済が予想通りに改善した場合、利上げをすべきだとの方針を再表明した。金利先物市場では6月の利上げ確率はいまだ1けた台だが、2%前後から6%へ上昇。12月の利上げ確率も49%から54%へ上昇し、ドルを支えた。《NO》

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