NYの視点:サウジアラビア対イラン、競争激化で原油上げどまりも

2016年5月10日 07:15


*07:15JST NYの視点:サウジアラビア対イラン、競争激化で原油上げどまりも

世界最大の原油輸出国サウジアラビアのサルマン国王は、ヌアイミ石油鉱物資源相を退任させ、後任にサウジの国営石油会社サウジアラムコの会長ファリハ氏を起用すると発表した。ヌアイミ石油鉱物資源相は1995年から同職にあり、OPEC加盟国の中でも知名度が高かった。

前回4月に行われたカタール・ドーハでのOPEC会合で、OPECのリーダーでもあるサウジアラビアは世界の原油価格の下落を抑える増産凍結を支持する意向を当初示唆していた。ところが、権力を増しつつあるサルマン国王の介入で、土壇場でサウジアラビアはこの方針を覆した。結局。この会合では増産凍結が見送られた。サルマン国王はイランの協調がない限り、増産凍結を支持しない断固とした方針。この動きから、今回の再編は一部で予想されていた。

サウジアラビアの再編は原油戦略だけでなく、減産して価格を安定させることよりも、市場のシェアを維持し、OPEC非加盟国に圧力をかけることを優先していることを示しているとの指摘もある。専制君主国であるサウジアラビアの権力シフト、同国のライバルであるイランとの緊張が高まっていることが根本にあるようだ。ヌアイミ石油鉱物の辞任は、30歳のサルマン国王の権力が強固となった証拠でもあると言われている。

核開発問題絡みでの制裁が解除されたばかりのイランはできる限り産油量を増やし、制裁が実施されていた期間の損失をできるだけ取り戻す方針。昨今の保守派なスンニ派とシーア派との競争の激化でサウジアラビアとイランの緊張が高まっており、サルマン国王は、原油市場での激しい戦いも辞さないと見られている。言い換えればサルマン国王の石油政策は外交政策の延長線上にあるとエコノミストは指摘している。サウジアラビアは、欧米諸国と核問題で合意後経済制裁が解けたイランが再び勢力を強めることをどうしても避けたいとの意向がある。イランとともにサウジも原油の供給ペースを緩めないとすると、原油価格の上値も限定的になる可能性がある。《NO》

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