熊本地震により被災した企業は1万7000社超え―取引先は仕入先・販売先を合わせて約3万1000社に
2016年4月30日 11:08
熊本地震の影響は、被災地に所在する企業にとどまらず、取引を行う多くの企業にも広がりを見せている。同時に、被災地には多方面から支援の輪も拡大しつつある。今後、被災地域の復旧・復興とともに、データによる現状把握は被災地に所在する企業の一日も早い企業活動の再開や、今後の効果的な復興支援策の策定のために不可欠といえる。
そこで、帝国データバンクでは、2016年3月末時点の企業概要ファイル「COSMOS2」(約146万社収録)を基に、本社が被災地に所在する企業1万 7208 社の取引先(仕入先・販売先)や各地域の産業の集積状況を明らかにした。
被災地に所在する企業と取引がある企業をみると、被災地所在企業の仕入先は全国で1万5911社判明した。このうち、被災地所在企業を主力先としている企業は4829社あり、被災地所在企業の再建が遅れるとこれら仕入先企業の業績に悪影響が及ぶことが懸念される。
他方、販売先は1万5754社であった。被災地所在企業からの仕入れを主力にしている企業は5103社ある。特に、被災地を含む「九州」は4105社で8割以上を占める。さらに「関東」も517社で1割超となっており、熊本地震による影響は全国に波及する可能性がある。とりわけ、製造業に強みを持つ熊本の販売先には中部地域の企業が多い。また、別府市や由布市にある企業の取引先は九州エリアの企業が多くなっている。加えて、観光を主要産業とする地域では個人顧客も含めた全国からの支援が重要となるとしている。
また、東日本大震災の時には、被災地所在企業の販売先は新たな仕入先を確保しようと行動したこともあり、もし熊本地震の復興が遅れることになれば、同様に被災地所在企業は販売先を失うことになる可能性がある。一方で、熊本地震から短期間で復興することができれば、被災地所在企業にとって販売先が維持できることになる。そのため、震災からの復興を早期に進めることが、被災地所在企業の業績回復につながるとともに、販売先にとっても継続的な仕入先を確保できることになる。被災地所在企業の取引先は主力となる産業によっても異なるため、復興・支援策の策定には地域の実態に合わせたきめ細かい取り組みが重要となるとしている。
熊本地震により被災した企業は1万7000社を超え、さらにその取引先は、仕入先・販売先を合わせて約3万1000社で、全国に及ぶ。被災地所在企業の復活には、早期の復旧・復興が欠かせないが、その政策の立案・実施には企業や地域の置かれた実情に沿ったきめ細かな支援がカギとなるという。(編集担当:慶尾六郎)