変貌する首都東京:東京の再起動計画は止まらない。第一弾は新宿南口で始まった
2016年4月2日 20:25
2020年に開催される「東京オリンピック」だが、その開催が決定してからというもの、東京の再開発が急激に加速している。鉄道インフラの整備が進み成田・羽田両空港からのアクセスが飛躍的に増加すると言われる大手町・丸の内、そして有楽町。駅周辺の再開発や区役所・公会堂の建て替えが進む渋谷や池袋。オリンピック選手村や競技場など新設会場が集中しマンション建設が進む湾岸地区。山手線新駅の設置やリニア中央新幹線の起点となる品川駅周辺など、東京は劇的に変化しつつある。
こうした地域の再開発および開発は、交通インフラの整備だけではなく、2002年に施行された都市再生特別措置法に基づく「特定都市再生緊急整備地域」に指定されていることで、さらに後押しされている。
そのなかで、追加処置として品川、渋谷とともに2012年に国の「特定都市再生緊急整備地域」に指定された新宿駅を中心とした再開発の第一弾が、JR新宿駅南口再開発だ。「特定都市再生緊急整備地域」は、容積率や高さ制限が緩和されるため、自由度の高い都市計画を構築することができる。JR東日本が行なっている南口再開発は、このなかに含まれている。
新宿南口に3月末に完成・オープンした地上33階地下2階建てのLINEやエプソンの本社がキーテナントとして入るオフィスビル「JR 新宿ミライナタワー」は、旧南口JR駅舎跡に建設した複合ビル。高さは約170メートルで、低層部の商業施設「ニュウマン(NEWoMan)」と線路上空部の文化施設等はルミネ、オフィスはジェイアール東日本ビルディングが運営。またJR駅南側の線路上空2階に新駅舎を設け、構内線路上空部の5~7階は、「Japan Creative Terminal」をコンセプトに合計最大520席を収容する多目的ホール・スタジオ「LUMINE 0」や、全長約100mの回廊空間を備えた屋外広場、認可保育所、クリニックで構成、オープンは4月15日を予定している。
この「JR 新宿ミライナタワー」には従来、甲州街道のJR南口陸橋にあったタクシー乗り場を移設した「タクシーターミナル」、新宿西口などに分散していた長距離高速バス乗り場を集中的に運営する「高速バスターミナル」が開設される。成田エキスプレスで新宿に到着した海外からの帰国者や来日観光客にとって利便性が一気にアップする。この交通ターミナルは、甲州街道沿いに位置し、JRの線路上空に約1400ha超の人工地盤を構築することで整備された都市インフラだ。
これを睨んで、新宿高島屋の南側に位置する「千駄ヶ谷5丁目地区」の再開発事業が加速している。千駄ヶ谷5丁目地区内北西部では、日清製粉が所有する本社ビルと三菱地所が所有する日本ブランズウィックビル、10階建ての新宿パークビルの3棟を1棟に建替え、2018年の完成を目指し16階建てのオフィス・店舗・公共施設を含むビルを建設するというもの。また、この再開発ビルに隣接する農林中金家の光協会ビルは2016年8月末完成を目指し、替え工事を行なっている。このふたつの大型再開発ビルの間には、約2200㎡の広場が新設され、新宿駅から高島屋まで続くペディストリアンデッキが、広場ともに明治通りにつながる。この南口開発にあわせて新宿高島屋も大規模リニューアルを進める。
また、新宿南口商圏拡大に危機感を抱く新宿西口商業施設の再開発も活発化する。JR東日本は、新宿駅地下1階の北通路を拡幅して、改札を通ることなく東西の行き来を可能にする幅員約25m、延長100mの新宿駅東西自由通路の2020年開通を目指して工事中だ。
西口の大規模な更新を目標に、ヨドバシカメラはMY新宿第二ビルを2010年に取得し大規模な再開発の準備を進めている。ヨドバシカメラの新宿西口本店は現在、拠点が10カ所以上に分散しているが、MY新宿第二ビルにあった京王バスの高速バスターミナルが先のJR 新宿ミライナタワー「バスタ」に移動後に解体、高層ビルへ建て替える。これを皮切りに、同社マルチメディア館を中心としたエリア一帯の再開発を行なう計画だ。
小田急は新宿駅東西自由通路の開通を契機に、西口の大規模な更新を目論んでいるとされる。「新宿新聞」などによれば、小田急は「区などの行政機関、西口に拠点を置く他事業者との協議のもと、駅前の広場整備とともに、ビルの開発計画をまとめ」、「周辺エリアを巻き込む形で新宿スバルビル、小田急ハルク、小田急百貨店を、順次、高層ビルへと建て替え、下層を商業施設、上層をオフィスとする」計画があるという。
京王でも現在の京王線新宿駅と京王百貨店の再開発計画があるという。旧態とした百貨店を立て替え、商業施設と来日観光客向けの新設ホテルとする計画があるとされる。
東口でも再開発の動きが活発化する。JRグループのルミネは、東口「ルミネエスト」の建て替えについて検討に入る見通しだ。「ルミネエスト」は、東京オリンピックの1964年に開業した、地下2階地上8階建て商業ビル。地下部分は新宿駅と接続し、飲食、物販店舗の入居する商業ビルとなっている。
建築工事の長さで有名なスペインのバルセロナにそびえるガウディの「サグラダ・ファミリア」は、工事開始が1882年で、2026年の完成を目指している。一方、新宿駅は1885年に誕生して、その工事は2020年代中に終わりそうにない。お台場、大手町、品川、新宿、変貌する東京リニューアルは止まらない。(編集担当:吉田恒)