【コラム】安保法制、参院選で国民の審判を

2016年4月2日 18:39

 集団的自衛権の行使を含む安保法制。今も世論を二分している。日本弁護士連合会の村越進会長は「この安保法制は『憲法前文』『同第9条』に定める恒久平和主義に反し、平和的生存権を侵害する」と断言する。

 また「憲法改正手続を経ずに一内閣の閣議決定による憲法解釈の変更に基づき法案を作成し、国会で可決されたもので、実質的に憲法を改変するものとして立憲主義に反する」と指摘し「憲法違反の安保法制の施行に抗議するとともに安保法制の廃止を求める」と訴えている。

 実際の危険性も懸念する。村越会長は(1)我が国が集団的自衛権の行使として武力行使した場合はもちろん、PKOや米軍等の武器等防護による武器使用や後方支援の拡大に踏み出せば外国軍隊の武力行使と一体視され、我が国が相手国からの攻撃の対象になる可能性も高まる。

 (2)海外にPKOとして派遣されている自衛隊に対し、駆け付け警護等の新たな任務と任務遂行のための武器使用権限が付与されれば自衛隊員が任務遂行中に武装勢力などの攻撃を受け、反撃することで戦闘行為となり、自ら殺傷し、殺傷されるという極めて危険な事態に至るおそれがある。

 安保法制に反対し、懸念を示す国民の多くの主張は、これらの指摘に集約されている。一方、政府・与党は「危険が高まるのではなく、抑止力が高まる。戦争を未然に防ぐ」と主張する。

 安保法制成立過程においても「相当の時間をかけ、国会で審議を尽くした」とし、強行採決を正当化する。昨年のあの紛糾した中での強行採決に国民の何割が正当な審議、採決だったと納得しているだろう。

 そもそも、発端は安倍氏が再び総理になった直後に渡米し、オバマ大統領との首脳会談で、安倍総理が集団的自衛権見直しの検討に入る意向が示された時から今日の状況が生まれた。背景に日米安保条約の片務性を解消したいとする安倍氏自身の思いが強いように筆者は感じている。

 改憲に時間がかかりすぎるため、先行して解釈改憲したとしか思えない。政府・与党は「憲法の範疇」と主張する。が、日米ガイドラインの改定や米国での安倍総理の演説内容は安保法制に先行して、安保法案成立を前提に約束したもので、いわば、後から法的に担保する安保法制になった感がある。その意味では否応なく成立させざるを得なかったといえよう。

 戦後70年の安保・外交政策を大きく変える安保法制は本来、国政選挙で国民の審判を仰ぐ必要があったはず。だが、選挙は常に「経済」「雇用」「賃金」だった。安保を前面に打ち出した選挙はない。

 今回、否応なく夏に参院選挙が実施される。衆院選挙とのダブル選挙になる可能性もある。安保法案審議中、そして今も続く「安保法制」賛否の国民の意思はこの国政選挙で明確に示してもらうことが望ましい。

 安保法制で新しい任務を付与される自衛隊員やそれを見守る家族らの視点でみても、世論を二分するような不安定な国民指示基盤の上にある「安保法制」により、命を落とすかもしれない、自身が殺人者になりかねないリスクの中で任務にあたりたくないだろう。安保法案成立そして施行後、初の国政選挙で、審判を仰ぐことが与野党のためにも望ましい。与野党が正面から争点に取り組む真摯な姿勢に期待したい。(編集担当:森高龍二)

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