佐藤繊維 新ブランド「991(キューキューイチ)」を地元・山形で披露 素材とパターンにこだわった立体ニット

2016年3月27日 21:38

 佐藤繊維は26日、同社が昨年4月にオープンした山形・寒河江のセレクトショップ「ギア(GEA YAMAGATA)」でメンズの新ブランド「991(キューキューイチ)」のコレクションを開催した。新ブランドのローンチイベントとなるもの。ショーには「991」の2016年秋冬コレクションを中心にパリの合同展示会トラノイ・ファム(TRANOI FEMME)に出展している「エムアンドキョウコ(M.&KYOKO)」の2016年秋冬コレクション4体と「ギア」で販売している「リック オウエンス(RICK OWENS)」や「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」などのブランドをミックスコーディネートしたレディースとメンズの春夏コレクションも登場した。

 オバマ大統領夫人がアメリカ大統領就任式で着用したニナリッチのイエローのカーディガンに使われた世界一細いモヘア糸を開発したことで話題となった山形の紡績ニット会社・佐藤繊維。独自に開発した糸やニットは素材にこだわる日本のトップデザイナーが早くから採用しており、現在はほかに無い新しいニットを求めるパリのラグジュアリーブランドのニットデザイナーや有力ブランドからも高く評価されている。今年1月にピッティ・イマジネ・ウォモでデビューし、2016年秋冬からは阪急メンズ館、ユナイテッドアローズ、エストネーションなどでも展開する「991」は同社の“ものづくりの集大成”といえるもので、上質な素材、服のようなパターンなどを追求した立体的なニットを提案している。

 コレクションに登場した「991」の秋冬最新作13体もショーで見ると佐藤繊維がこれまで提案してきたカラフルな色と凝りに凝った素材や編み地を組み合わせたデザインに比べると非常にシンプルでベーシック。デザインというよりも素材とパターンのよさが浮かび上がってくる大人の男のための服という印象。話題のタッキースタイルとは逆のノームコアやミニマリズムという言葉に近いが七つのストーリーからなるコレクションには佐藤繊維らしいこだわりが隠されていいる。

 例えば、非常にシンプルな18ゲージのインナーは羊毛の機能性を活かすために塩素などを使わずスケール(鱗状のキューティクル)を残しながらウォッシャブルとアンチピリングを実現した糸を使った洗えるウール。ハイゲージのカシミアニットは梳毛引きではなく18ゲージの紡毛で作られている。ミドルゲージのセーターやグローブにはヤクやキャメル、ローゲージのセーターやニットキャップは貴重なマンクスロフタンやブラックウェリッシュの黒い毛を使い、手紬に近いものに仕上げている。また、ハイゲージのニットジャケットや手袋は布帛のパターンをニットに落とし込み、ダーツを駆使することきれいな立体感を出していると言う。

 佐藤正樹社長は、「東京ではなくサンプルの糸作りから工場、セレクトショップまでを見てもらえるこの場所でコレクションを発表することに意味があると思いました。昔、上質だと言われていたものがボリュームになる中、991では洋服に近い着やすいニットに挑戦しましたが、今までに出せないくらいきれいなラインで立体感のあるニットができましたし、ジャケットはニットジャケットの歴史が変わるといっていいくらいのものになったと思っています。日本のデザイナーは世界で評価されていますが、991はデザイナーの売り場では無くヨーロッパのエレガントでクラシックなスーツの売り場で売れるニットを目指していますし、ニットもニットジャケットもさらに新しいもの、今まで無かったものを提案できると思っています。まずはメンズブランドとして確立することが先ですが将来的にはレディースサイズなどの可能性もあります」と話した。

佐藤正樹社長

2015年4月にオープンした佐藤繊維「ギア」

(ファッションジャーナリスト・樋口真一)

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