914万人が「隠れメタボ」 基準値以内でも心臓病などのリスク大

2016年3月23日 10:39

 厚生労働省研究班(代表=下方浩史・名古屋学芸大教授)がまとめた推計によると、肥満ではないのに高血圧や高血糖などの異常を持つ「隠れメタボリックシンドローム」の患者が全国で914万人に上るという。

 研究班は1997~2012年に国立長寿医療研究センターが実施した40?79歳の男女約4000人の健康調査データを解析し、男性の10.9%、女性の13.6%が体格指数(BMI)が25未満にも関わらず、血清脂質、血圧、血糖のうち2つの異常を持つことがわかった。全国で男性380万人、女性534万人の隠れメタボ患者がいるとの推計だ。

 「メタボ」という言葉は肥満の代名詞のように使われているが、太っているという見た目や腹囲だけの問題ではない。高血圧、糖尿病、脂質異常症をもたらし、動脈硬化などのリスクを増大させる恐ろしい状態なのだ。メタボは内臓脂肪症候群とも呼ばれていて、腹囲が基準値(男性85cm、女性90cm)をオーバーし、血清脂質、血圧、血糖の3項目のうち2項目以上の異常がみられる場合、メタボと判断される。

 だが、日本人は血糖値を下げるインスリンの分泌能力が低い人が多いため、痩せていても糖尿病にかかりやすい。太っても太っていなくても代謝機能などに異常が出る人が多いのである。メタボ診断によって肥満対策が推進される一方で、隠れメタボは放置されているのは大問題だ。

 メタボの状態をそのままにしておくと、動脈硬化が年齢相応より速く進行し、血管を塞ぎ、血流が途絶え、酸素や栄養が届かずに細胞が死んでしまう恐れがある。これが心臓で起こると心筋梗塞、脳で起こると脳梗塞となり、発症すると後遺症で不自由な生活を強いられたり、命を失う恐れがある。

 研究班は来年3月までに、隠れメタボの診断や生活習慣改善の指導法をまとめた指針を作成するとした。運動する習慣がなかったり、食生活や生活習慣が乱れている人は、特に注意が必要だ。対策がとられない場合は、患者数が10年後には1014万人と予想されている。(編集担当:久保田雄城)

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