脳は膨大な情報をカテゴリー化して整理し、思考や判断に利用している―東北大・筒井健一郎氏ら

2016年3月15日 21:59

 東北大学の筒井健一郎准教授・細川貴之助教らの研究グループは、サルを使った動物実験で、脳が情報をカテゴリー化して整理していることを示す神経活動を発見した。この成果は、抽象的概念の形成や、論理的思考にかかわる神経メカニズムの解明に貢献することが期待できるという。

 今回の研究では、複数の抽象図形を、数秒後にジュースあるいは食塩水が与えられることを示す予告刺激として用いて、予測的に行動するようにニホンザルに訓練した。するとサルは、それぞれの図形と、ジュースあるいは食塩水の関係を学習し、ジュースを予測すると、それが口元のチューブから出てきたときに取りこぼしなく飲めるようにチューブを舐めながら待ち、食塩水を予測すると、それを飲まないで済むように口を閉じて待つようになった。

 そして、刺激とジュース・食塩水の関係をすべて入れ替えると、サルはたくさんの図形のなかの一つの図形の意味が変化したことを経験しただけで、ほかの図形についても意味が変化するということを予測して行動できるようになった。これは、サルが同じ結果に結びつく図形をカテゴリー化して記憶しており、そのカテゴリーを使って考え、判断することによって、予測的に行動していることを示している。

 さらに、サルがこの課題を行っている間に前頭連合野から神経活動を記録したところ、前頭連合野の神経細胞の一部が、特定のカテゴリーの図形をサルに見せた時だけ興奮したことから、図形を見て想起したカテゴリーの情報を保持していること、また、これらの細胞の周辺には、ジュースと食塩水のどちらが与えられるのかということ、すなわち、カテゴリーを使って予測した結果の情報を保持している神経細胞もあることが明らかになった。

 これらの結果から、脳が膨大な情報をカテゴリー化によって整理し、物事の関係性を分かりやすくしたうえで、思考や判断に使っているということが明らかになった。

 今回の成果は抽象的概念の形成やそれを使った論理的思考にかかわる神経メカニズムの解明に貢献することが期待される。また、抽象的な思考が不得意だとされるアスペルガー症候群などの発達障害の病態の理解や、新たな治療法の開発にもつながる可能性があるという。

 研究グループは今後、さらに前頭連合野の神経細胞群がどのようにこの推論問題を解いているかを明らかにするため、神経活動データの解析を進めていくことになっている。

 なお、この内容は「Journal of Neuroscience」に掲載された。論文タイトルは、「Representation of functional category in the monkey prefrontal cortex and its rule-dependent use for behavioral selection」。

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