【コラム】原発再稼働は、30キロ圏全自治体の同意と避難計画策定を条件に

2016年3月13日 00:02

 関西電力高浜原発の稼働中の3号機で運転差し止め仮処分が9日、大津地裁で決定した。関西電力はこれを受けて10日、3号機を停止させた。運転中の原発が止められた意義は大きい。改めて、原発の安全性、新規制基準、避難計画、そして地元同意の在り方の問題などを再考させることにもなった。

 安倍晋三総理は10日の記者会見で「関西電力には仮処分決定を受けて、さらに安全性に関する説明を尽くしていく事を期待したい」と述べ「政府としても、そのように指導していく」と語った。

 また「安全性の確保は最優先であり、(原発への)国民の信頼回復が何よりも重要だ」として「国民への真摯で十分な説明に発電事業者も、政府も、出来る限り努力していくべきであると考える」と強調した。

 また、安倍総理は「原発の再稼働については高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルでの新規制基準に適合すると判断した原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら、再稼働をすすめるというのが政府の一貫した方針です」と語った。

 総理の言葉を総理の本意と受け止めたい。そのうえで、その姿勢が本意であるなら、国は『地元の理解』の中でも、特に明確な『地元の同意』について、原発所在地自治体の長と知事の同意のみをもって『地元の同意』を得たという形式論的な現行制度は見直し、行政区割りを超えた『原発から半径30キロメートル圏内にある全ての自治体(市町村)の同意』をもって、地元同意とするのが理に適ったものだろう。あわせて、知事の同意とともに議会の3分の2以上の賛同を要する厳格なものにすべきだ。

 避難計画についても、その対象は半径30キロ圏内全てをカバーすることは当然で、避難訓練を策定された避難計画に基づいて1回は実施し、そのうえで、浮き彫りになった課題を是正したものを国の原子力防災会議で最終決定するようにすべきだ。

 また避難計画策定後でなければ、原子力規制委員会の新規制基準に適合した場合であっても「再稼働は認めない」という厳格な姿勢を示してこそ、政府の原発に対する一定の信頼が国民から得られることになるのだろうと思われる。

 安倍総理は原発の依存度は逓減させていくと明言するものの、一方で「資源の乏しい我が国がエネルギー供給の安定性を確保するためには原子力は欠かすことはできない」との考えを鮮明に示した。

 総理の考えは日本経済団体連合会の榊原定征会長と同じ方向を目指したもののようで、東電福島第一原発事故で暮らしを破壊された多くの人々の苦しみや苛立ち、憤りや虚しさ、さらに自然生態系への悪影響など、5年が経っての現況からみても「原発ゼロ」への方向転換と廃炉に向けた取り組みこそ選択すべき道ではないかと思われる。

 そして、この問題は今も国論を2分したままだ。原発とどう向き合うのか、自民政権とこれに対峙する政治勢力との国政選挙における政権選択項目の大きなひとつにすべき時期を迎えている。(編集担当:森高龍二)

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