自殺者を減らせるか 今国会で法改正へ
2016年3月3日 16:11
自殺対策を国や自治体の責務と定めた自殺対策基本法の改正案が先の参院本会議で全会一致により可決された。今後衆院で審議し、3月中に成立、4月に施行される見通しだ。今まで国だけに義務付けていた自殺対策の計画を、全ての都道府県と市町村が策定するよう定めた内容だ。
警察庁によると、国内の昨年1年間の自殺者数(暫定値)は2万4025人。18年ぶりに2万5000人を下回ったものの、いまだに毎日65人が自死の道を選んでいる計算だ。人口10万人あたりの自殺者数は米国の2倍近く、英国の3倍以上で、先進7カ国で最悪の水準になっている。理由としては「健康問題」がすべての年代でトップ、「経済・生活問題」「家庭問題」が続いている。
国内の自殺者の数は2011年まで14年連続で3万人を超えていた。自殺対策基本法はそのさなかの06年に議員立法で成立したもので、政府に自殺対策の大綱づくりを求めている一方、自治体の取り組みは自主性に委ねられていた。
今回の改正では、自治体が自殺者の年代や職業などの傾向を分析した上で、具体的な支援策を作ることが盛り込まれている。例えば若い世代の自殺者が多ければ教育に重点を置き、無職者の自殺が多ければ求職相談会などで対策を強化する、といった具合だ。
すでに独自の対策を行っている自治体もある。横浜市は鉄道事業者の自殺対策に対して助成金を出した。対策にはホーム上安全柵の整備や、気分を沈静化させる効果があるとされる青色照明灯の設置などがあった。鉄道を手段とする自殺が多い大都市ならではの取り組みといるだろう。
札幌市は、第2次札幌市自殺総合対策行動計画(札幌ほっとけない・こころのプラン)を策定。これに則りセミナーや啓発イベントが各地で開催されている。先月は「こころのセンター」と公立図書館がコラボして、「いのちを守る」をテーマとした特設展示を行った。
自殺を考える理由は人それぞれで、マニュアル通りの計画だけでは人の命を救うことはできない。周囲の人が異変にいち早く気づき、対応することができるかどうか。そして、いちど人生に絶望した人が「やっぱり生きたい」と思える社会であるかどうか。 これはすぐに成果が出るものではなく、長期的な視点が必要だろう。(編集担当:久保田雄城)