整った流れが乱流に遷移する際の法則を明らかに―東大・佐野氏、玉井氏
2016年2月23日 15:08
東京大学の佐野雅己教授と玉井敬一大学院生は、整った流れ(層流)が乱れた流れ(乱流)に遷移する際に普遍的な法則があることを初めて実証した。
空気・水・血流・惑星表面の大気などの「流れ」は、流体の速度が十分遅い場合は一般に規則的(層流)となり、速度が速くなると乱れる(乱流)。層流がいつどのようにして乱流に遷移するのか、そこにどんな法則があるのかは、1883年にイギリスの物理学者レイノルズがパイプ流で初めて乱流を研究してから130年以上にわたり未解決の問題であった。
今回の研究では、板2枚の間に水を流すチャネル実験装置を製作し、チャネルの入り口から乱流状態の流れを注入し、その乱れが下流に流れるに従って減衰するのか、あるいはチャネル内に広がるのかを調べた。その結果、十分下流の地点で観測すると、最終的に層流状態がとなるのか、乱流状態となるのかは、ある流速(レイノルズ数)で明確に分かれることが明らかになった。
また、乱流状態となる臨界点に近づくに従って、乱流割合の空間的な減衰が遅くなり、ついには減衰せずに乱流割合が一定値だけ残る現象や、定点観測ではレイノルズ数を下げてゆくと乱流スポットが到達する時間間隔が臨界点に近づくにつれ発散する現象など、相転移と類似した現象が観測された。
これらは、いずれも相転移で見られる相関長の発散という現象に対応し、その発散の仕方から臨界指数と呼ばれる量を得ることができる。実験で得られた臨界指数は、相転移現象で理論的に予測されている臨界指数と良く一致することが分かった。これらの結果から、乱流への遷移が、普遍的な相転移と同じ法則に従うことが示された。
佐野教授と玉井氏は、「乱流遷移が普遍的な相転移現象であるという実験結果は、従来の枠を超えた新しい理論の発展を促すとともに、周辺のさまざまの分野で見られる不規則現象一般に対する理解を進展させることが期待される」としている。
なお、この内容は「Nature Physics」に掲載された。論文タイトルは、「A universal transition to turbulence in channel flow」。