もう一押しも二押しも期待の株主還元策継続株に「なかったコトに」の株価サプリメント効果が浮上余地=浅妻昭治
2016年2月22日 09:45
<マーケットセンサー>
「なかったコトに!」とネーミングされているサプリメントがあるそうだ。早速、ネットで検索してみるとヒットし、ダイエット中にドカ食いして脂肪やエネルギーを過剰摂取しても、「なかったコトに」してくれる効能のサプリの映像がクロズアップされた。兜町の投資家にとって、羨ましい限りの効能である。日経平均株価が年初来、急落に次ぐ急落で昨年2015年大納会の終値から4167円安の2段下げとなっており、多くの投資家が、もし株価に効くサプリメントがあって、その効能によって年初来のクラッシュが「なかったコト」になってくれれば、どんないに楽であったかとこいねがうかと容易に想像できるからだ。
ついでに銀行株を保有している個人投資家は、今年1月29日の日銀の金融政策会合で決定された初のマイナス金利導入の追加金融緩和策も、「なかったコト」になってくれればと切望しているはずだ。銀行株の株価は、マイナス金利導入に伴う利ざや縮小や資産運用環境の悪化による業績懸念が強まって急落、業界トップの三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>(東1)は、411.9円安値まで突っ込み、アベノミクス相場が、スタートした直後の2013年2月以来の500円台割れとなった。黒田東彦日銀総裁はその後、国会などでマイナス金利の銀行経営へ影響はないなどと強調しているのは聞こえてくるが、同社株の戻りは限定的で500円台を出没しながら下値を探っており、戻り待ちか損切りか、それともあの「失われた10年」並みの塩漬けを覚悟しなくてはならないかと迷いに迷っていると推測される。
「なかったコトに」してくれるには、もちろんサプライズが必要である。円高阻止には、円売り介入の強権発動、原油先物(WTI)価格下落には産油国の減産合意、世界同時株安には、2月26日から開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議での金融市場の安定化策定、中国経済の先行き不透明感払拭には、3月5日に開かれる中国の全国人民代表大会での構造改革決定などが不可欠となる。しかも、このサプライズがいくつか実現するとしても、マーケットの需給構造が、買い方不在から買い方消滅、全員売り方に変わったなかで、上値に厚い戻り待ちを吸収してくれるほどのニューマネーが、マーケットへの流入があるのかないのかも、はなはだ不確かで、相場全般はなお流動含みで推移すると腹を固めなければなさそうだ。
では個別銘柄ベースではどうか?ここでも、「なかったコトに」なるにはソフトバンクグループ<9984>(東1)がストップ高したようなサプライズが不可欠である。同社株のストップ高は、株価が、昨年来安値4133円に突っ込んだ翌日の2月15日に取得上限を1億6700万株(発行済み株式総数の14.2%)、取得総額を5000億円として決めた自己株式取得を発表したことが引き金となっており、こうした銘柄の続出である。実際に同社と同様に15日以降に自己株式取得を発表した銘柄は、前週末19日までの1週間で23社に達した。19日発表のソフトバンク・テクノロジー<4726>(東1)については、週明け以降の株価反応をみなければサプライズとなるかどうか不明だが、ただ18日まで発表した22銘柄ベースでは、ソフトバンクGと同様に発表した翌日にストップ高した銘柄は、GMO TECH<6026>(東マ)のみの1社にとどまった。
またGMO TECH自身が、このストップ高で年初来の急落が「なかったコトに」なったかといえば、それでも昨年大納会の終値に対してなお700円幅の未達になっている。これはソフトバンクGも同じで、ストップ高を交えて5915円高値まで急伸したが、大納会終値に対してなお200円強足りず、前週末には再度、5000円台を試す展開となっている。前記の22銘柄ベースでは、年初来の急落が「なかったコトに」なった銘柄は、発表順でマースエンジニアリング<6419>(東1)、オーハシテクニカ<7628>(東1)、野崎印刷紙業<7919>(東2)、エッチ・ケー・エス<7219>(JQS)、エムティーアイ<9438>(東1)の5銘柄の少数派となった。このことは、個別銘柄の自助努力で年初来の急落が「なかったコトに」するには、なお一押し二押しもの株主還元策の継続や株主との対話を重視するコーポレート・ガバナンス(企業統治)の尽力の必要性を示唆しているとも受け取れる。
そこで「灯台下暗し」ではないが、超足元でなお一押し二押しの追加的なコーポレート・ガバナンス策が期待できる銘柄に注目したい。この2月末に株式分割を予定している銘柄と、2月期決算会社のなかで高配当ランキングの上位にランクインする銘柄である。いずれも、今週24日に権利付き最終日を迎えるが、このギリギリの権利取りは妙味十分で、権利落ち後も一押し二押しの逆行高に進む可能性も想定されそうだ。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)