IoTを加速するための2つの課題と、業界初の最新技術
2016年2月20日 20:46
最近、毎日のように目や耳にする機会が増えてきた「IoT(Internet of Things)」。日本ではモノのインターネットと訳されることの多いこの技術は、これまで個別に働いていたモノ同士をインターネット技術と最新の各種センサー・テクノロジーで相互接続して新たな価値を創造しようとするものだ。今や、産業機械から家電などの一般消費材に至るまで、我々の日常を構成しているあらゆる分野の「モノ」でネットワークの構築が始まりつつある。
IT市場専門のリサーチを行うMM総研は1月20日、国内企業全業種の4299社を対象に実施したWebアンケート調査結果をまとめ、2014年度実績と2019年度までの予測をまとめて公表した。その調査報告によると、国内IoT市場規模は2014年度の1733億円から2015年度に2930億円と、前年比69.1%に急増する見通しであり、さらにその勢いは止まらず、2019年度には7159億円を見込んでいる。また、2014年度から2019年度までの年平均成長率は32.8%に達する見通しだ。分野別にみてみると、「アプリケーション開発・運用」が28%を占め、次いで「IoTプラットフォーム/システム構築・運用」の24%、「ネットワーク/コネクティビティ」19%、「センサ/デバイス」17%と続いている。
まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのIoT市場ではあるが、いくつかの課題もあるようだ。同調査によると、回答企業全体の内、IoTを導入している企業は約1割の469社に留まっている。IoTの導入を未だ検討している企業には、やはり何といっても情報漏洩やサイバー攻撃に対する不安があるようだ。自社の生産設備や機械、施設、製品をネットワークに接続することで重要なデータの流出や外部からのサイバー攻撃の可能性を懸念するのは、企業としてはある意味、当然のことだ。それを防ぐために、まずはネットワークセキュリティの強化やシステム全体のセキュリティ対策を万全にすることが急務となる。これがクリアされれば、IoTの導入はさらに加速するに違いない。
もう一つの大きな課題は、システム構築とそれにかかる運用コスト、運用業務の効率化だ。一口にIoTと簡単に言っても、システムの開発や構築には相応のソフトウェアやハードウェアなど、幅広い専門知識と膨大な開発工数が必要になる。また、各デバイスにおいて実装環境や開発環境も異なるので、簡単に評価することも困難だ。これらの課題はIoT導入の大きな障害となっているのは間違いない。資本力の大きな企業でないと、なかなか導入には踏み切れないだろう。
そんな中、電子部品大手のローム株式会社<6963>が2月16日、8種類の先進センサデバイス環境構築を支援するArduino対応センサシールド「SensorShield-EVK-001」を発表し、IoT機器開発を促進する業界初の技術として注目を集めている。
同製品は、既にロームグループが量産している、加速度、気圧、地磁気などのセンサ8製品をそれぞれ基板実装したものとオープンプラットフォーム接続用ボードをキット化したもの。電子工作分野で世界的に活用されているArduino Unoなどに接続し、ソフトウェアを組み込むことで、簡単に各センサの情報を測定することができる。
またセンサデバイスの簡単評価、簡単導入が可能になると、IoT機器の開発工数を大幅に削減することができる。これによって、プロトタイプの開発なども比較的気軽に行えるようになるため、IoT市場の拡大に貢献することだろう。
これまでIoTの導入に躊躇していた企業も、同製品のように、簡単にデバイスの評価や導入ができる環境を整えることができれば、一気にIoT市場参入をはじめるかもしれない。そうなれば、MM総研の2019年度予測すらはるかに上回る成長も期待できるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)