「民泊」はホテル扱いで決着? 需要増加に潜む問題点とは

2016年2月18日 08:34

 訪日外国人の急増などで都心や観光地のホテルが飽和状態になっている。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、この宿泊施設不足を解消しなければと各所で対策が練られている。そのような中、打開策の一つとして注目されるのが「民泊」。一般住宅の空き室に旅行客を有料で泊める仕組みで、仲介業者がインターネット上で提供者と宿泊者をつないでいる。

 しかしこの民泊には2つの大きな問題点がある。法令についてと、利用者のマナーについてだ。まずは法令。一般の旅館やホテルに適用される「旅館業法」では、旅館業を経営するも場合は都道府県知事や市区長の許可を受ける必要があるとされている。ほかにも換気、採光、照明、防湿、清潔等の衛生基準が定められている。現行法上では、宿泊料金を得る民泊サービスは旅館業にあたることになる。だが民泊サービスを提供する貸し手の大半はどこにも営業許可を受けていない。大都市のホテル不足を背景になし崩しで違法状態が続いているのだ。

 マナーについては、近隣住民とのトラブルがすでに各地で発生している。「夜中にインターホンを鳴らされた」「人の出入りが激しく、防犯面で不安」「管理者が誰か分からない」「大人数が集まり騒いでいる」などという苦情により警察沙汰になることも珍しくなく、早急なルール作りが求められていた。

 そこで厚生労働省と観光庁の検討会が先月、民泊を旅館業法の「簡易宿所」の枠組みに当てはめることを決定。政令にある延床面積の基準を緩和し、旅館業法の許可を取得しやすくするとした。法規制により国内で2万件以上あるとされる物件の実態を把握するとともに、適正な民泊施設の増加を促していく予定だ。

 宿泊先に貸主が住んでいない場合、貸主が客に本人確認することや、トラブルに緊急対応できる体制も必須とした。賃貸物件の「また貸し」を防ぐため、許可申請時に賃貸借契約に違反していないかを自治体が確認することも盛り込んだ。

 この法改正については、政府が民泊にお墨付きを与えることで業者の営業が加速し「ドヤ街」化するのではとの懸念も根強い。一方でその経済効果は10兆円に上るとの試算もある。検討会は案の詳細について3月末までに中間報告をまとめ、厚労省が同法に関する政令や通知を改正して4月に施行する方針だ。 (編集担当:久保田雄城)

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