わずか800mの「蒲蒲線計画」が期待されている理由

2016年2月16日 08:32

 羽田空港がある東京都大田区のJRの蒲田駅と京浜急行電鉄<9312>の蒲田駅を結ぶ「蒲蒲線計画」に期待が集まっている。両駅の距離はわずか約800mと短いが、鉄道で結ばれることで東急線方面から羽田空港へのアクセスが便利になる。

 現在の羽田空港へのアクセスは、東京モノレールと京急空港線の2路線。羽田空港の発着枠が拡大する中、新しいアクセスルートが必要とされている。羽田空港への新路線計画を構想する上で、空港・都内・神奈川県内・埼玉県内のアクセス改善が期待できる蒲蒲線は、距離が短いながらも効果が大きいと考えられているのだ。

 蒲蒲線計画が浮上したのは最近のことではない。戦前に「羽田航空電鉄」というモノレールが計画されたことがあるという。当時、モノレールは新しい乗り物として世界中で注目され、ドイツでは工業都市ヴッパータールで懸垂式モノレールの営業路線が開業した。これを受け、日本でも各地でモノレール計画が持ち上がったといわれている。

 時は経ち、2000年1月の諮問機関・運輸政策審議会がまとめた東京圏の鉄道整備基本計画(運政審18号答申)では、蒲田・京急蒲田・大鳥居間が「目標年次(2015年)までに整備着手することが適当である路線」とされた。

 15年までの実現は叶わなかったが、大田区は長年に渡って蒲蒲線の運動を続けてきた経緯がある。昨年12月、大田区と京急の共同企画であるラッピング電車のお披露目会では「何としても実現したい」と松原忠義大田区長が改めて悲願成就を願った。

 約800mに「大田区の再生と新産業の創造」という大きな可能性が秘められているのだ。大田区役所の建物に地下には、蒲蒲線建設のための導入空間があるのだという。

 蒲田は商店街が発展した街であり、再開発が進んでいる。蒲蒲線が実現し、新たな人が流れるようになれば、大きな経済波及効果が生まれる。実際に駅を作る際に必要な両駅を結ぶトンネルの掘削、エスカレーターやエレベーターの完備、東横線との接続駅である多摩川駅から東横線への乗り入れ計画など、ある程度のことは既に構想済みだという。

 蒲蒲線の概算建設費は1080億円、都内への経済波及効果は初年度2385億円と見込まれている。(編集担当:久保田雄城)

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