福島原発の事故で飛散した放射性セシウムを含む微粒子の構造を解明―東大・小暮敏博氏ら
2016年2月14日 21:07
東京大学の小暮敏博准教授、農業環境技術研究所の山口紀子主任研究員らによる研究グループは、福島県の森林などから、福島第一原発事故で放出され、大気中に含まれていたものと同様の放射性微粒子の採取に成功し、その主成分や内部構造を明らかにした。
2011年3月の福島第一原発事故は、周辺の土地に高濃度の放射能汚染をもたらし、その対策は4年半が経った現在も社会問題のひとつである。原子炉から放出した放射性セシウムの主体はガス化した状態であったと考えられているが、破壊した原子炉の内部から飛来したと考えられる数ミクロン以下の微粒子にも含まれることが、最近の研究でわかっている。
今回の研究では、事故後に福島で採取された杉の葉などをイメージングプレート(IP)と呼ばれる放射線記録媒体の上に置いて放射性微粒子の大まかな位置を特定し、電子顕微鏡内で直径が数ミクロン以下という非常に小さな微粒子を形態観察とX線組成分析により見つけ出した。
また、この微粒子を集束イオンビーム加工と呼ばれる手法によって切断・薄片化し、より高解像度の透過電子顕微鏡によって微粒子内の構造を調べた。その結果、放射性微粒子の主体は自動車や建築の窓などに使われる珪酸塩ガラスと本質的に同じものであり、二酸化珪素のガラス中に鉄、亜鉛、スズ、カリウム、ルビジウム、セシウム、塩素などが溶け込んだものであることがわかった。また、セシウムは、球形の微粒子の中心よりも表面付近の方が高濃度となっていることが明らかになった。
研究グループは今後、より多くの試料を調べることで、この放射性微粒子の原子炉内での成因を解明し、採取した微粒子の耐候性試験等を行うことにより、微粒子やそこに含まれる放射能の今後の環境中での動態を明らかにする予定という。
なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。論文タイトルは、「Internal structure of cesium-bearing radioactive microparticles released from Fukushima nuclear power plant」。