グローバル展開を進める日本企業 躍動するアジアと復活の欧州
2016年2月13日 22:14
日系企業の海外進出が活発になっている。2015年末に発足したAEC(ASEAN Economic Community:ASEAN経済共同体)の影響もあって、近年はとくにアジア諸国への進出が目立っている。
AECは参加10カ国、人口6億人、GDP2.5兆ドルの巨大経済圏。「ヒト」「モノ」「カネ」の動きが自由化されることで、今後の経済発展が大いに期待されている。また、2050年には人口が約7.8億人に達すると予測されていることもあり、人口面でも非常に有望視されている。日本企業にとっても、この巨大なマーケットは魅力にあふれるフロンティアであることは間違いない。
しかし、なぜ今になってASEAN地域に改めて進出しているのだろうか。日本企業は早くから、同地域に展開していたのではなかったのだろうか。その理由は、これまでのASEANと、これからのASEANにおけるASEAN地域に対する考え方が全く異なるからだ。
これまで、ASEAN地域は日本企業にとっては、製造拠点としての位置づけが主なイメージだった。しかし、AECの発足などもあり、もはやASEANは製造拠点ではなく、消費マーケットとして注目されるべき地域だ。IMF World Economic Outlook(2014年10月版)によると、2014年‐2019年の名目GDPが、日本の2.9%に比べ、ASEANでは7.2%の成長率を見込んでいることからもよくわかる。
一方、欧州でも、在欧州日系企業(製造業)の拡大意欲が、リーマン・ショック以前の水準まで回復していることがジェトロの調査で分かった。同社が2014年10月に在欧州日系企業1496社(回答企業数984社、有効回答率65.8%。トルコは製造業のみ)に行ったアンケート調査の結果、在欧州日系製造業で今後1~2年の事業展開を「拡大」と回答した企業は52.7%となり、リーマン・ショックや欧州債務危機が発生する以前の水準まで回復していることが分かった。経済の先行きには依然として慎重な見方が大半を占めたものの、2014年の営業利益見通しは「黒字」が70.1%となっており、順調に回復に向かいつつあるのは確かなようだ。中国系や韓国系企業の進出や、社会不安などマイナス要素はあるものの、景気後退から脱却すれば、欧州の成熟したマーケットはやはり大きな魅力だ。
欧州の状況が徐々に回復に向かうことを見越し、欧州市場で積極的な動きを見せている日本企業も増えている。例えば、トヨタ<7203>は15年前にハイブリッド車「プリウス」を投入したものの、日米に比べて売り上げが伸び悩んでいた。欧州では、それまでディーゼル車が主流だったことに加え、技術の進歩によって燃費が向上していること、さらには新しい電気自動車の利用価値に対する疑問が根強かったものの、長引く原油価格の高騰やECによる厳しい二酸化炭素排出量の規制によって、消費者が次第にハイブリッド車に傾倒しはじめ、現在ではハイブリッド車が同社の欧州市場における全販売台数の4分の1以上を占める堅調ぶりだ。
また、自動車用防振ゴム・ホース部門で国内トップシェアを誇る住友理工<5191>も、欧州市場へ新規開拓に乗り出した企業の一つだ。同社は、今年1月早々にもグローバル本社を設立するなど、グローバルマーケットへ積極的な姿勢をみせているが、去る1月14日、スウェーデン・ストックホルムに本社をもち欧州全域に展開するホースアセンブリー企業「Hydroscand Aktiebolag」と高圧ホースの販売について、欧州を中心とした 43 ヶ国を対象とする独占的販売店契約を締結した。住友理工グループが産業用ホース事業で欧州市場へ本格参入するのは初めてで、今後の展開に期待がかかる。
日本企業はその体質上、世界市場に向けたグローバルな展開が難しいという声もある。しかし、苦手を克服しなければ、そのマーケットはどこか他の国や企業に持っていかれるだけだ。ASEANも欧州も、大きく動き出している今、日本企業にもぜひ、積極的なグローバル展開を行って、活躍してほしいものだ。(編集担当:松田渡)