浴槽での溺死10年で1.7倍、適正な湯温を知っていますか?
2016年2月8日 11:28
寒暖の波が激しい今冬だが、雪による交通マヒや集落孤立などだけではなく、ホッとできるはずの家の中にも危険は潜んでいる。消費者庁は、冬場は家庭の浴槽で高齢者が死亡する事故のリスクが高まるとして、十分な安全策をとるように注意を呼びかけている。
厚生労働省の人口動態統計によると、家庭の浴槽での溺死者数は2014年に4,866人で、2004年と比較すると10年で約1.7倍に増加している。このうち約9割が65歳以上の高齢者で、特に75歳以上の年齢層で増えている。そして、全体の約半分が12月から2月の冬場に死亡している。独居を含む高齢者人口が増えたことが原因と推測される。消費者庁によると、日本の高齢者の溺死者数は欧米に比べて多いといい、「熱い湯に肩までつかるという日本固有の入浴スタイルが影響している」としている。
同庁では昨年12月に55歳以上の男女3,900人を対象にインターネットでアンケート調査を行った。それによると、「入浴中にのぼせたり、意識を失ったりしてヒヤリとした経験のある人」は、338人と全体の9%だった。ヒヤリとした時の状況を聞いたところ(複数回答)、「浴槽に長く(10分以上)つかっていた」と回答した人が184人で最も多く、「熱い湯につかっていた」はその半分以下の72人だった。ヒヤリとしたタイミングは「浴槽から立ちあがった時」(99人)が「浴槽内」(75人)を上回った。また、入浴中の事故に関する認識では、「持病が無く普段元気な人でも入浴事故が起きる」ことを知っている人は3分の1にとどまった。
調査では、入浴の仕方も聞いている。お湯の温度は最も多かったのが「40~41度」の53%で、「42度以上」は37%だった。浴槽につかる時間は「5~10分」が49%だったが、32%は「10分以上」つかっていた。厚生労働省の研究班は「41度以下で10分以内に上がる」ことを推奨しているが、温度と時間の両方でこの安全な入浴方法を守っている人は42%にとどまった。
消費者庁が勧める入浴する際の注意点は以下のとおり。
1)入浴前に脱衣所や浴室を暖める 2)湯温は41度以下、湯につかる時間は10 分までが目安 3)浴槽から急に立ち上がらない 4)飲酒、食事のすぐ後の入浴は控える 5)入浴する前に同居者に一声掛けて、見回ってもらう
消費者庁では、「高齢者の入浴事故を防ぐためには、本人だけでなく家族や介護者、周囲の人々が日頃から注意を払うことも大切」としている。湯船につかって「極楽、極楽……」とつぶやいているうちに上がるのは何とも無粋なようだが、本当の極楽からのお誘いを受けない秘訣のようだ。(編集担当:城西泰)