【証券業界の4~12月期決算】「チャイナ・ショック」以後は不振でも、野村以外は夏まで好調だった業績で補った
2016年2月6日 22:12
■10~12月の業績悪化を4~9月分でカバー
2月2日、証券業界の4~12月期決算が出揃った。全般的にみると、8月の「チャイナ・ショック」以後、年末までの東京市場の株価は低迷し不安定で、デイトレーダーも含めて個人投資家はリスクを恐れて売買を手控えたため、証券会社の主要な収入源の株式売買委託手数料や投資信託の販売手数料が不振に陥った。証券界あげての大イベントだった11月4日の郵政3社の新規上場は、各社の新規口座こそ増えたものの売買高の増加にはそれほど結びつかず、日経平均が一時2万円台を回復したその後の株価の回復も、個人投資家を呼び戻す効果は薄かった。超低金利が続き国債など債券の売買もふるわなかった。
4~9月期までは業績好調だった総合証券もネット証券も、その影響を免れることはできなかった。10~12月期の最終利益は、対前年同期比で野村HDが49%減、大和証券Gが32%減、カブドットコム証券が33%減、松井証券が25%減、マネックスGは3.48億円の赤字になるという悪さ。それでも野村HD以外は好調だった4~9月期までの〃貯金〃が効いて4~12月期決算には増収、増益が並んでいる。
1月29日の日銀のサプライズ金融緩和「マイナス金利導入」をきっかけに今後、株式市場が再び活発化すれば、最終四半期の1~3月期には売買委託手数料収入が増加する。それにより業績がV字回復すれば、野村HDも含めて証券大手全て、通期で増収増益を確保できる可能性が残されている。
なお、マーケットの動向に大きく左右される2016年3月期の通期業績見通し、期末配当予想は、証券業界の慣例で各社とも非公表となっている。
■ネット証券は株主還元を強化し、増配、自社株買い、自社株消却を実施
4~12月期の実績は、野村HD<8604>は収益合計4.2%減、収益合計(金融費用控除後)4.6%減、税引前四半期純利益26.6%減、最終四半期純利益5.6%増の減収、最終増益。期末配当は未定。10~12月期の営業、アセット・マネジメント、ホールセールの主要3部門を合わせると減収減益で、それらが3つ揃って増収増益だった4~9月期から一変。10~12月期の落ち込みをそれ以前の好調さでカバーできなかった。最終増益は前年同期の訴訟和解費用の計上がなかったため。
永井浩二・グループCEOは「営業部門は、不安定な市場環境を背景に投資家の様子見姿勢が継続し、前四半期比で減収減益となりました。アセット・マネジメント部門は、継続的な資金流入等により運用資産残高が過去最高を更新し、前四半期比で増収増益でした。ホールセール部門は、不透明感の強い市場環境が影響し前四半期比で減収となりましたが、コスト削減の取り組み効果により増益となりました」とコメントしている。
大和証券G<8601>は営業収益4.0%増、純営業収益2.6%増、営業利益1.9%増、経常利益1.1%増、四半期純利益13.1%減。10~12月期だけ取り出せば純利益は32%減で、投信販売、新規上場、M&Aが好調で2ケタ増益が並んでいた4~9月期の業績から急ブレーキがかかった。それでも税務上の理由でマイナスだった最終利益以外は前年同期比プラスを維持した。
業績の足を引っ張ったのが主力のリテール(個人営業)部門で、10~12月期の経常利益は37%減。ヨーロッパで債券売買が不調だった海外部門は7~9月期に続いて経常赤字。その一方でホールセール部門、投資部門は堅調だった。期末配当は未定。
カブドットコム証券<8703>は営業収益11.9%増、純営業収益11.2%増、営業利益18.3%増、経常利益18.2%増、四半期純利益26.2%増で、4~6月期の業績と比べると前年同期比の増加率がほぼ半減した。株価の変動が大きかった10~12月期は個人投資家が売買を手控え委託手数料収入が減ったため営業収益9%減、営業利益24%減、最終利益33%減だったが、それ以前の好業績が効いて4~12月期の最終利益は依然、過去最高水準にある。
株主還元方針を改め、2018年3月期までの配当性向の下限の目安を30%から50%に引き上げた。合わせて期末配当予想を6円と発表し、年間配当予想は12円。前期の年間配当は23円だったが、昨年7月に1対2の株式分割を実施したので、実質的に0.5円の増配になる。自社株の株価下落をチャンスとみて500万株、17億円上限の自社株買いおよび自社株消却も発表した。
松井証券<8628>は営業収益4.6%増、純営業収益4.2%増、営業利益4.9%増、経常利益4.8%増、当期純利益9.7%増で、4~9月の業績と比べると前年同期比の増加率がほぼ3分の1に減った。10~12月期は売買委託手数料収入が前年同期比15%減で、営業収益は12%減、営業利益は17%減、最終利益は25%減だったが、それ以前の好業績が効いて増収増益は維持している。期末配当予想を前期と同じ20円と発表し、年間配当予想は45円で5円の増配。発行済み株式総数の3.71%にあたる1000万株の自社株消却を発表した。
マネックスG<8698>は営業収益13.3%増、税引前利益31.8%増、四半期損益69.2%増、最終四半期損益70.1%増で、大幅増収増益だった4~9月期と比べると増益幅が圧縮した。期末配当は未定。10~12月期は傘下のマネックス証券の売買委託手数料収入が減少するなど3.48億円の最終赤字だったが、好調だった4~9月期で補うことができている。アメリカ事業は4~12月期で初めての黒字を計上した。(編集担当:寺尾淳)