ショック直後の別事象もPTSDの引き金に
2016年2月2日 11:24
ある経験で強い精神的ショックを受けたあとに、同じような状況になると恐怖症状がぶりかえす心的外傷後ストレス障害(PSTD)。これまでの研究は症状が明らかになってからのものが多く、トラウマ直後のケアについては不明な点が多く残されていたが、筑波大学の坂口昌徳准教授らのグループは「経験から6時間以内に、よく見知った場所に行くと、その場所でも恐怖反応を示すようになる」ことをマウス実験で初めて明らかにした。
PTSDの患者は、トラウマ記憶の汎化(はんか)という症状によって長期的に不眠などに悩まされる。記憶の汎化とは、通常では関係性のない複数の事柄がトラウマ記憶と結びついてしまう現象を指す。研究グループは、恐怖経験直後にどのような条件で記憶の汎化が生じるかを検討した。
研究では、マウスを箱に入れて不快な電気刺激を与えて取り出し、一定時間後に同じ箱や別の箱に入れて反応を調べた。その結果、学習から6時間以内に記憶の汎化が起こりやすいことを発見した。さらに、汎化が成立する条件を詳細に検討すると、6時間以内によく見知った場所に行くと、その場所でも恐怖反応を示すようになる(汎化が起こる)ことが明らかになったという。
研究グループでは、「PTSD患者に対してはトラウマ直後から積極的に患者の置かれている状況に介入し、その後の汎化を予防する必要性があることが示唆された。今後は、実際の患者での検討を続け、睡眠障害と記憶の汎化についてさらに研究したい」としている。(編集担当:城西泰)