加齢による高血圧のリスクを高める受容体を特定―NIPS西村明幸氏ら
2016年1月31日 21:15
自然科学研究機構生理学研究所(NIPS)の西村明幸特任助教・西田基宏教授らの研究グループは、加齢に伴なう高血圧のリスクを高める受容体を特定した。この成果は、加齢に伴う高血圧の原因解明や治療法の開発に貢献することが期待されるという。
血管は、非常に弾力性のある組織で、収縮と弛緩を繰り返すことで血管にかかる圧力(血圧)と血液の流れを調節している。しかし、加齢に伴う様々なストレスが要因となって血管が厚く硬く変化していくと、弾力性が失われ、慢性的に血圧が高い状態(高血圧)になる。
今回の研究では、血圧を上昇させる作用を持つ生理活性ペプチド「アンジオテンシンII」の応答性に関与する分子として、P2Y6Rと呼ばれる受容体に注目した。そして、通常のマウスとP2Y6Rを持たないマウスの双方にアンジオテンシンIIを4週間投与したところ、P2Y6Rを持たないマウスでは血圧上昇と血管中膜の肥厚が抑制されることがわかった。
また、細胞膜上でP2Y6RはAT1Rと複合体を形成していること、MRS2578というP2Y6Rと結合する化合物が、AT1RとP2Y6Rの複合体形成を阻害することが明らかになった。さらに、アンジオテンシンIIとMRS2578を同時投与することで血圧上昇が抑制されたことから、AT1R-P2Y6R複合体がアンジオテンシンIIによる血圧上昇に重要であることが示された。
胎児と成体の血管平滑筋細胞においてP2Y6R遺伝子の発現量を調べたところ、P2Y6R遺伝子は成長するにつれてその量が増加すること、成長に伴いAT1R-P2Y6R複合体が増加することで、アンジオテンシンIIの応答性が増殖から肥大応答に変化すること、そして1年齢の老齢マウスではP2Y6R遺伝子の発現量がさらに上昇していることがわかった。
今回の研究成果は、加齢に伴う高血圧の原因解明や、加齢高血圧による心血管リスクの予防・治療法開発にも貢献することが期待されるという。
なお、この内容は「Science Signaling」に掲載された。論文タイトルは、「Purinergic P2Y6 receptors heterodimerize with angiotensin AT1 receptors to promote angiotensin II-induced hypertension」。