物流、発展の裏側で業者は薄利…儲からない理由とは

2016年1月29日 16:28

 全国各地で物流施設が続々建設されているが、大和ハウス<1925>は800億円を投資し、千葉県に大型物流施設を新設する。首都圏での即日発送などに対応しやすい立地であり、幅広い企業が利用することになりそうだ。

 ビッグカメラ<3048>はネット通販向けの配送機能を強化すべく、関東に5ヵ所ある物流センターを、新設する2ヵ所の大型物流施設に集約する運びだ。30億円を投じ、埼玉県東松山市にある既存施設の隣接地に大型物流施設を新設するという。

 サービスの充実も著しい。Amazonのプライム会員であれば2時間以内に商品を受け取れる「プライムナウ」、最短20分で届く楽天<4755>の「楽びん!」、セブン&アイ・ホールディングス<3382>は180万点もの商品のネット販売をスタートした。

 これほど物流が盛んになれば、物流業者も相当な利益を上げていてもおかしくなさそうだが、「搾取される側」になっているのが現状だ。14年の法人企業統計によると、資本金1億円未満の業者の売上高営業利益率はわずか1.5%。純利益率は1.2%だ。

 資本金1億円以上の企業は売上高営業利益率は6.3%、純利益率3.8%と悪くはないが、資本金1億円以上の企業の流動比率は99.4%と100%を下回った。流動比率は「1年以内に現金化できる資産」を「1年以内に払うべき負債」で割って算出される。つまり、値が大きいほど良い。

 薄利の理由はいくつか考えられる。まず一つに、国内の物量が減少し続けていることが挙げられる。ネット通販が盛んな今、意外な話かもしれないが、公共投資が減り、建築資材の運搬が減ったのだ。「ものづくり」が海外に流れたのも大きな損失となっている。

 また、トラック運転手不足も深刻だ。女性ドライバーを活用する事業所もあるが、全体の13%に留まっている。荷物の積み下ろしなどの荷役作業が困難、更衣室やトイレなどの施設面の改善が必要という点で、女性の採用に消極的な企業が多いという。配送料の値上げもやむを得ない状況にある。そう感じるのは、筆者だけであろうか。

 このような背景があり、売上減少を補填すべく物流各社がアジアなどに進出している。ヤマトホールディングス<9064>は沖縄に企業間物流拠点を設立し、アジアへの物流拠点からアジア各国に向けて翌日配送を実施した。

 国内配送においては、Amazonの大型ポストやコンビニ取り置きサービス、楽天は「楽天BOX」を設置し、購入商品を受け取れるようにした。これにより再配達のコストを削減できる。物流業者が苦境から脱するには、まだ多くの時間が必要であろう。(編集担当:久保田雄城)

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