塾講師の賃金未払い相次ぐ 残業代はどこまで?
2016年1月21日 21:22
大手学習塾が、講師への賃金の支払いをめぐり労働基準監督署の是正勧告を受ける事案が相次いでいる。アルバイトの大学生が行う授業の準備や採点などの時間に対して賃金を支払っていなかったためだ。ある個別指導塾でアルバイト講師として働く大学1年生の例では、授業1コマ(80分)あたり1500円を賃金として支払っていたが、あくまで支払いは「授業のコマ分」のみだった。これを受けて労基署が授業の前後や会議の時間の6カ月分の未払い賃金として、計約22万円を支払うよう勧告した。
別の大学生も大手学習塾でアルバイトをしていたが、ミーティングや準備のため、授業開始の20分前には出勤しなければならず、退勤は授業終了から1時間後になることもあった。授業の前は資料作成やコピーなどの準備があり、授業の後は後片付けや報告書の記入など雑務に追われていたという。冬期講習がある冬休みは直前にシフトを決められてしまい、自分の都合で休めず自身の試験勉強もできなかったというから本末転倒である。
一般的に、使用者の指揮監督のもとにある時間については労働時間であると労働基準法(労基法)で定められている。店番や電話番などでも、職場に身をおいて自由に行動することができなければ「手待ち時間」であるため、労働時間としてカウントする必要がある。
会社側は「スタッフが自主的にやっていた」と言う可能性もあるが、仕事の一環として必要な作業であると見なされれば、それは労働時間だ。会議や研修なども、使用者の命令によるものであったり、参加しないと会社から不利益を受けたりするものなら同様である。
そして労基法は1週間に40時間、1日に8時間を超えて労働させてはならないと規定している。これを超えて働いた場合は時間外労働(残業)になり、労働者の権利として残業代を請求できる。
過重労働に悩む学生を支援する労働組合として設立された「ブラックバイトユニオン」に寄せられた相談は2014年の1年間で732件。そのうち約3割の284件が学習塾業界で働く学生からだった。この実態を受けて15年6月には「個別指導塾ユニオン」の相談窓口があらたに開設されている。担当者は「もし、実際に働いていて疑問に思ったことや、説明を受けて気になったことあればユニオンへ問い合わせてほしい」としている。 (編集担当:久保田雄城)