筆記用具が盛り上がりを見せる文具市場の今を読む
2016年1月14日 13:02
初めての就学で真新しい削りたての鉛筆を親に用意してもらった時から、社会人になった後まで、文房具が我々の元を離れることはあまりない。電子機器による記録方法が発達した現在でも、とりあえず背広のポケットにボールペンを忍ばせている人が多いのではないだろうか。
そんな身近な文房具市場、最近はどうなっているのだろうか。矢野経済研究所はこの度、2014年度の国内文具・事務用品市場の調査を実施した。調査対象は文具・事務用品関連事業者で、調査期間は15年10月~12月まで。当該調査の対象となる文具・事務用品の範囲にはボールペンなどの筆記具や各種紙製品、のり、カッターやはさみ、電子文具等も含まれた。
まず市場全体では前年度比0.6%減、市場規模は4662 億円だった。2012年度以降、文具市場では筆記具が盛り上がりを見せているそうで、数々のヒット商品が出たことが要因だという。一方、紙製品は筆記具ほどの勢いはなく、これが結果的に文具市場規模全体の微減につながったようだ。
文具別で見ると、国内のボールペン市場規模はメーカーの出荷金額ベースで439億円、前年比5.8%増となっている。ここで言う「ボールペン」には水性・油性の両方が含まれるが、特に好調なのがゲルインキを含む水性ボールペンである。水性ボールペン市場だけで前年度比10.4%増の234億円となっている。好調の要因は、数年前から流行り始めた「消せるボールペン」の登場だという。パイロット<7846>の「フリクション・ボール」や三菱鉛筆<7976>の「ユニボール・ファントム」などが代表的な商品だ。
ボールペンは容易には消えない、ということが最大の特徴だとも言えるが、これを逆の発想でとらえたのが消せるボールペンである。修正液や修正テープは使用の跡が誰の目にもわかってしまうが、消せるボールペンで書いて消した修正跡はほとんど目立たず、そんなところが人気なのかもしれない。
続いて国内シャープペンシル市場であるが、本体と替芯を含めた全体の市場規模はメーカー出荷金額ベースで145億円、前年度比5.1%増という結果だった。この結果を意外と捉える人も多いかもしれないが、シャープペンシルと替芯はただ書くことができればいい、とする段階から脱却し、「書くプラス、何らかの高機能性」が要求される段階のようだ。例えば折れにくい、書き味がなめらか、手に負担がかかりにくい構造、太さや色のバリエーションといった点だろう。
シャープペンの主なユーザー層である中高生が減少している最近の状況下にも関わらず市場が拡大している点は、既存の商品の改良などの企業努力が新しいユーザーを獲得する結果につながった例だ。筆記具以外では、個人向けの手帳やノート類が好調だったようだ。
一見、「これ以上の発展はあるのか?」と思われがちな文具であるが、よく市場を観察してみると予想以上に興味深いことが発見できそうだ。(担当編集:久保田雄城)