15年の「医療機関」、「老人福祉事業者」の倒産は25件 2000年以降で3番目の低水準
2016年1月14日 14:53
2015年の介護報酬改定は、9年ぶりに総額で 2.27%の引き下げとなった。しかし、介護職員の処遇改善加算がなされるなど、医療業界と同様、人材確保が業界活性化の大きなポイントとなっている。このような中、帝国データバンクは、2000年~2015年(16年間)の「医療機関」、「老人福祉事業者」の倒産動向(法的整理を対象)について分析した。
それによると、2015 年の医療機関の倒産は25 件(負債総額48億9300万円)となり、前年比で4件減少。2000年以降、2000年(19件)、2001年(21件)に次ぐ低水準となった。
内訳は、病院が1件<(医社)ジーアンドケー、香川県、破産、負債2億5000万円>、診療所が15 件(負債総額40億8900万円)、歯科医院が9件(同5億5400万円)となり、「病院」が2000 年以降、最少となった。一方、負債総額は48 億9300万円となり、2000年以降で最小を記録。病院の倒産減少が大きく影響した。負債トップは、(医社)翔久会(東京都、診療所、破産、負債10億6400万円)。
2015 年の各項目の内訳をみると、態様別では25件中24件が「破産」、負債額別では「診療所」の40.0%6件)、「歯科医院」の55.6%(5件)が「1億円未満」となった。厚生労働省の調査によると、2004年から2014年までの10年間で、病院が584施設減少した一方、診療所は3410施設増加、歯科医院は2035施設増加したという。
引き続き、診療所、クリニックを中心とする競争が続くなか、都市部での施設集中、競争激化と地方の人材不足という傾向が顕著となり、経営状態が悪化する施設が増加する可能性が高いものの、「企業再生支援機構」による支援や、2013年3月に終了した「中小企業金融円滑化法」の実質的な継続取り組み、M&Aなどによって、医療機関の倒産は小康状態が保たれているとみられる。今後は、2016年度の診療報酬改定がどのような影響を及ぼすのか注目されるとしている。
老人福祉事業者の倒産は58件となり、2000年以降、最多を記録。一方、負債総額は39億4100万円と前年(45件で77億1400万円)を大きく下回り、小規模事業者の倒産が目立っているとした。
2000年4月の介護保険法施行をきっかけに、介護サービス関連事業に参入して活路を開こうとする企業が相次ぎ、2001年に2万782だった訪問介護・通所介護施設・事業所数は2006年には4万357にまで増加(厚生労働省データ)するなど、同業者間の競争が激化。そうしたなか、2006 年4月に改正介護保険法が施行され、介護報酬の引き下げ、施設サービスにおける居住費用・食費が介護保険給付対象から除外されるなど、経営環境が悪化する業者が増加。2007年以降の倒産件数急増につながった。
近年はそうした状況に加え、労働環境・賃金問題などから人手不足に陥る施設の増加や、2015年4月の介護報酬改定(総額で2.27%引き下げ)によって、経営悪化が進む事業者が相次ぎ、倒産増加の一因になっていると見られるとしている。
2015年に倒産した58件のうち、業歴5年未満が34件(構成比58.6%)、負債1億円未満が49件(同84.5%)、初期投資のかからない訪問・通所サービス業者が50件(同86.2%)を占めるなど、大半が業歴の浅い小規模事業者となっているのが現状だが、今後は、負債額10億円を超える中規模以上の事業者の倒産がどのような動向をみせるのかがポイントとなるとしている。(編集担当:慶尾六郎)