JAMSTEC、新しい大気海洋結合現象「ダカール・ニーニョ/ニーニャ」を発見

2016年1月11日 16:24

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)のパスカル・オエットリ特任研究員、森岡優志研究員、山形俊男上席研究員は、西アフリカのダカール沿岸に発生する地域的な大気海洋結合現象を世界で初めて発見し、「ダカール・ニーニョ/ニーニャ」と命名した。

 海面水温が気候変動に大きな影響を及ぼす大気海洋結合現象は、赤道太平洋に数千キロメートル規模で発生するエル・ニーニョ/ラ・ニーニャ現象が知られている。こうした大気海洋結合現象は、大陸の西岸に地域レベルでも発生し、付近の気象や農業に多大な影響を与えていることが近年の研究により明らかになってきている(沿岸ニーニョ現象)。

 今回の研究では、1982年から2011年まで観測データと再解析データを解析し、ダカール沿岸で海面水温が最も大きく変動する海域を特定するとともに、領域平均した海面水温と南北風の標準偏差を月ごとに調べた。

 その結果、海面水温の年々変動は3月に最も大きいことがわかったため、3月にダカール沿岸で領域平均した海面水温の偏差をダカール・ニーニョ/ニーニャ指数と定義し、各年の変動について調べた。すると、30年間でダカール沿岸の海面水温が温かくなるダカール・ニーニョ現象が6回、冷たくなるダカール・ニーニャ現象が5回、それぞれ発生していることがわかった。

 さらに、ダカール・ニーニョ/ニーニャの発達メカニズムを調べるため、ダカール・ニーニョについて、海洋表層の混合層の熱収支を調べましたところ、ダカール・ニーニョに伴う温かい混合層水温(海面水温に対応)の偏差は、大気から海洋により多くの熱が移動すること(正の海面熱フラックスの偏差)で生じていること、特にこの海面熱フラックスの偏差は、日射の影響によることが分かった。一方、ダカール・ニーニョに伴う温かい海面水温は、直上の大気にも影響を与えていることが分かった。

 今後は、沿岸域の気候変動現象も予測できる高解像度な大気海洋結合モデルの開発に取り組んでいくとともに、これまで課題とされてきた中緯度における季節予測の研究に貢献していく予定となっている。

 なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。論文タイトルは、「A Regional Climate Mode Discovered in the North Atlantic: Dakar Niño/Niña」。

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