視覚認知で、色と形の情報が統合される証拠を発見―京大・齋木潤氏ら
2016年1月7日 21:29
京都大学の齋木潤教授らの研究グループは、物体の視覚的な記憶について、色と形の特徴が統合される証拠を発見した。
私たちは外界の事物を認識する際、色や形をバラバラの特徴ではなく、ひとつの物体として認識する。しかし、実際には視覚情報処理の初期段階では、物体を構成する各特徴は独立に処理されていることがわかっており、物体特徴が脳の中で統合される仕組みは認知科学で未解明の問題の一つとなっている。
今回の研究では、認知心理学で知られている「冗長性利得」という現象を記憶課題に応用した。まず、色と形の組合せからなる物体をディスプレイに2個呈示し、それらを記憶する。そして、テスト刺激が1個、記憶画面の物体位置のいずれかに呈示され、テスト刺激が記憶刺激に含まれる色、或いは形をどれか一つでも含んでいたか否かを、できるだけ速く正確に判断する課題を実施した。
その結果、記憶の符号化時には位置を共有する特徴のみが統合されること、統合された色と形は記憶保持中に位置に関係なく利用できるようになることが明らかになった。また、脳波データの解析から、位置に依存しない特徴の統合と、結合問題に関する有力な理論である「オブジェクトファイル理論」が想定する特徴と位置の結合は、脳内の異なる領域で処理されている可能性が示された。
オブジェクトファイル理論では、物体の諸特徴はその位置と強く結びついた形で保持されると考えられているが、今回の結果は、それとは異なる新たな特徴統合機構が存在することを示唆しており、視覚認知の結合問題に関する理論研究が再検討される必要があることを示しているという。
研究メンバーは、「特徴が統合された認知は一見自明のようですが、そのメカニズムは未解明です。今回の知見は、この結合問題の解明に向けた一つの手がかりになると考えています」とコメントしている。
なお、この内容は「Psychological Science」に掲載された。論文タイトルは、「Location-Unbound Color-Shape Binding Representations in Visual Working Memory」。